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うつ病で退職した後の失業保険ガイド!300日受給する条件と手続き

うつ病や適応障害で仕事を続けられなくなり、退職を選んだ方にとって、今後の生活費は大きな不安材料です。「失業保険はもらえるのか」「すぐに働けない状態でも受給できるのか」「自己都合退職だと不利になるのでは」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。

実は、精神的な理由で退職した場合、一般的な失業保険よりも優遇された制度を利用できる可能性があります。通常は90日や120日の給付日数が、条件を満たせば最大300日まで延びるケースもあるのです。また、自己都合退職であっても給付制限(待機期間)なしで受給できる仕組みも用意されています。

ただし、これらの制度を正しく活用するには、適切な手順を踏むことが欠かせません。特に「今すぐ働けない状態」の方は、焦って手続きを進めると不正受給を疑われるリスクもあります。この記事では、うつ病や適応障害で退職した方が、損をせず安心して失業保険を受給するための具体的なステップと注意点を解説します。まずはしっかり療養し、回復後に制度を最大限活用して生活を立て直しましょう。

目次

うつ病で退職した人が失業保険で受けられる優遇措置

うつ病や適応障害といった精神疾患が原因で退職した場合、失業保険の制度上、いくつかの優遇措置を受けられる可能性があります。ここでは、通常の失業保険とは異なる特別な扱いについて詳しく見ていきましょう。

「就職困難者」に認定されると給付日数が最大300日に

失業保険の給付日数は、通常、離職時の年齢や雇用保険の加入期間によって90日から150日程度です。しかし、「就職困難者」として認定されると、給付日数が大幅に延長されます。

就職困難者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、社会的事情により就職が著しく困難な者などを指します。精神疾患で退職した方の場合、精神障害者保健福祉手帳を持っているか、主治医の診断書によって「精神障害により就職が困難」と認められれば、この区分に該当します。

具体的な給付日数は以下の通りです。

  • 雇用保険の被保険者期間が1年未満:150日
  • 被保険者期間が1年以上:300日

たとえば、5年間同じ会社で働いていた30歳の方が、うつ病で退職して就職困難者と認定された場合、300日間失業保険を受給できます。通常の自己都合退職なら90日程度ですから、実に3倍以上の期間、生活の支えを得られることになります。

300日あれば、焦らずに療養し、体調を整えてから就職活動に取り組む時間的余裕が生まれます。精神疾患からの回復には個人差がありますが、無理に早期復帰を目指して症状を悪化させるよりも、しっかりと治療に専念できる環境を確保することが、結果的に安定した再就職につながります。

自己都合退職でも「給付制限なし」で受給できる理由

通常、自己都合で退職した場合、失業保険には「給付制限」があります。これは、ハローワークで求職申込みをしてから7日間の待機期間の後、さらに2か月間(2020年10月以降の離職は一部条件で短縮あり)給付を受けられない期間です。この間は無収入となるため、生活に困窮するケースも少なくありません。

しかし、「特定理由離職者」に該当すれば、この給付制限が免除され、待機期間7日の後すぐに失業保険を受給できます。

特定理由離職者とは、以下のような正当な理由により離職した人を指します。

  • 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷などにより離職した者
  • 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法の受給期間延長措置を受けた者
  • 父母の扶養、介護等のため離職した者
  • 配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になり離職した者

うつ病や適応障害で退職した場合、「心身の障害、疾病により離職した者」として特定理由離職者に認定される可能性が高いです。この認定を受けるには、ハローワークでの手続き時に、主治医の診断書や退職理由を証明する書類(退職届のコピーなど)を提出します。

たとえば、うつ病で休職後に退職した28歳の方がいたとします。通常の自己都合退職なら、ハローワークで手続きをしても最初の2か月は無収入です。しかし特定理由離職者として認定されれば、待機期間7日後の8日目から失業保険を受け取れるため、生活の不安が大きく軽減されます。

ただし注意点として、特定理由離職者に認定されても、就職困難者ではない場合、給付日数は通常の自己都合退職と同じ90日から150日程度です。給付日数を延ばすには、別途「就職困難者」の認定を受ける必要があります。両方の認定を受けることで、「給付制限なし」かつ「300日受給」という最も手厚い支援を受けられます。

国民健康保険料が安くなる軽減措置のメリット

失業保険とは直接関係ありませんが、退職後の生活負担を軽くする制度として、国民健康保険料の軽減措置も知っておくべきです。

会社を退職すると、それまで加入していた健康保険(社会保険)から国民健康保険に切り替える必要があります。国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、退職直後は収入がないにもかかわらず、前年の収入に基づいた高額な保険料を請求されることがあります。

しかし、以下のような軽減制度を利用できます。

非自発的失業者の軽減制度
特定受給資格者(会社都合退職)や特定理由離職者(正当な理由のある自己都合退職)として雇用保険の失業給付を受ける場合、前年の給与所得を30%として計算する軽減措置が受けられます。この措置により、国民健康保険料が大幅に安くなります。

たとえば、前年の年収が400万円だった方が退職した場合、通常なら年間40万円程度の国民健康保険料を請求されることがあります。しかし非自発的失業者の軽減制度を使えば、給与所得を120万円(400万円の30%)として計算するため、保険料は年間15万円程度まで下がるケースもあります。

この軽減措置を受けるには、市区町村の国民健康保険担当窓口で手続きを行います。必要書類は雇用保険受給資格者証です。ハローワークで失業保険の手続きをした際に発行されるこの証明書を持参すれば、軽減措置を申請できます。

退職後は収入が途絶える中、国民年金保険料、国民健康保険料、住民税など、さまざまな支払いが発生します。少しでも負担を減らすために、利用できる制度はすべて活用しましょう。国民年金保険料についても、免除・猶予制度がありますので、市区町村の年金担当窓口や年金事務所で相談することをおすすめします。

【重要】今すぐ働けない時は「受給期間の延長」を優先する

うつ病や適応障害で退職した直後は、心身ともに疲弊しており、すぐに就職活動を始められる状態ではないことがほとんどです。このような場合、失業保険の手続きを焦って進めるのは逆効果です。ここでは、「今すぐ働けない」状態の方が知っておくべき重要な制度について解説します。

働けない状態で失業保険をもらうのは「不正受給」になる?

失業保険は、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれ、「働く意思と能力があるにもかかわらず、就職できない状態にある人」に支給される制度です。この「働く意思と能力がある」という要件が重要です。

つまり、病気や怪我で働けない状態、妊娠・出産・育児ですぐに働けない状態の人は、失業保険の受給対象外です。もし働けない状態であるにもかかわらず、「働ける」と偽って失業保険を受給すれば、不正受給となり、以下のペナルティが科されます。

  • 不正受給した金額の全額返還
  • さらに不正受給額の2倍に相当する額の納付命令(合計で受給額の3倍)
  • 以後の失業保険の給付停止

たとえば、うつ病で退職した方が、「早く失業保険をもらわないと生活できない」と焦り、本当はまだ働けない状態なのにハローワークで「働けます」と申告して受給を開始したとします。その後、ハローワークからの求人紹介や就職活動の実績提出を求められた際に、実際には就職活動ができていないことが発覚すれば、不正受給と見なされる可能性があります。

失業保険の受給中は、4週間に1回ハローワークに出向き、「失業認定」を受ける必要があります。このとき、求職活動の実績を報告しなければなりません。働けない状態では、この求職活動ができないため、不正受給のリスクが高まります。

では、今すぐ働けない状態の人はどうすればいいのでしょうか。答えは「受給期間の延長申請」です。

失業保険には「受給期間」があります。これは、失業保険を受給できる期間の上限で、原則として「離職日の翌日から1年間」です。たとえば、2025年3月31日に退職した場合、2026年3月31日までが受給期間となり、この間に給付日数分(90日や300日など)の失業保険を受け取ります。

しかし、病気や怪我、妊娠・出産などで働けない期間がある場合、「受給期間の延長」を申請できます。延長できる期間は最長3年間です。つまり、本来1年間の受給期間が、最大4年間まで延びることになります。

うつ病で退職した方が、半年間療養する必要がある場合、受給期間の延長を申請すれば、その半年間は失業保険の受給期間にカウントされません。療養後、体調が回復して「働ける」状態になったタイミングで、改めてハローワークで失業保険の受給手続きを開始できます。

この延長申請をしておけば、不正受給のリスクを回避しながら、焦らず療養に専念できます。生活費については、次に説明する「傷病手当金」などの制度を活用することで、無収入期間を乗り切ることが可能です。

傷病手当金と失業保険はどちらを先に受けるべきか

うつ病や適応障害で退職した場合、失業保険のほかに「傷病手当金」という制度も利用できる可能性があります。この2つの制度の関係を理解し、どちらを先に受けるべきか正しく判断することが、生活再建の鍵となります。

傷病手当金とは

傷病手当金は、健康保険の制度で、病気や怪我で働けなくなった際に、給与の約3分の2相当額を最長1年6か月間受け取れる制度です。会社員として健康保険に加入していた方が対象で、以下の条件を満たす必要があります。

  • 業務外の病気や怪我で療養中であること
  • 療養のため労務不能であること
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業期間中に給与の支払いがないこと

重要なのは、退職後も条件を満たせば傷病手当金を受け取れる点です。具体的には、退職日までに継続して1年以上健康保険に加入しており、退職日時点で傷病手当金を受給しているか、受給できる条件を満たしていれば、退職後も引き続き受給できます。

たとえば、うつ病で1か月休職した後に退職した場合、休職期間中に傷病手当金の申請を開始していれば、退職後も最長1年6か月間(すでに受給した期間を含む)受け取れます。

どちらを先に受けるべきか

傷病手当金と失業保険は、同時に受給することができません。なぜなら、傷病手当金は「働けない人」に支給され、失業保険は「働ける人」に支給されるからです。

基本的な考え方は以下の通りです。

  1. 退職直後、まだ働けない状態の場合
    まず傷病手当金を受給し、同時に失業保険の受給期間延長を申請します。傷病手当金は給与の約3分の2なので、失業保険(給与の約50〜80%)よりも高額なケースもあります。何より、働けない状態で無理に失業保険を受給しようとすると不正受給のリスクがあるため、療養に専念できる傷病手当金を優先すべきです。
  2. 療養後、働ける状態に回復した場合
    傷病手当金の受給を終了し、ハローワークで失業保険の受給手続きを開始します。このとき、就職困難者として認定されれば、最大300日間失業保険を受給できます。

具体例で見てみましょう。

Aさん(32歳、男性)の場合

  • 勤続5年の会社でうつ病を発症し、2か月休職後に退職
  • 退職時点で傷病手当金を受給中
  • 退職後の流れ:
    • 退職翌日:ハローワークで失業保険の受給期間延長を申請(最大3年延長)
    • 退職後1〜6か月:傷病手当金を受給しながら療養(月額約20万円)
    • 7か月目:主治医から「就労可能」の診断を受ける
    • 7か月目:ハローワークで失業保険の受給手続きを開始、就職困難者として認定
    • 8か月目〜18か月目:失業保険を300日間受給(日額約6,000円、月額約18万円)

この流れにより、Aさんは退職後18か月間、収入を確保しながら療養と就職活動を行えました。

注意点として、傷病手当金の受給期間は「通算して1年6か月」です。退職前に休職期間があり、すでに数か月受給していた場合、退職後に受給できる期間はその分短くなります。また、傷病手当金は健康保険組合や協会けんぽに申請する必要があり、退職後は自分で手続きを進めなければなりません。

失業保険と傷病手当金、それぞれの制度の特性を理解し、自分の状況に合わせて最適なタイミングで切り替えることが、経済的な安定と心身の回復を両立させる鍵です。

失業保険を損せず受給するための具体的なステップ

ここからは、うつ病や適応障害で退職した方が、失業保険を最大限活用するための具体的な手順を解説します。正しい手続きの流れを理解し、一つひとつ確実に進めていきましょう。

ステップ1:ハローワークで受給期間の延長申請を行う

退職後、まだ働けない状態であれば、まず失業保険の受給期間延長申請を行います。これは必須のステップです。

延長申請の期限

受給期間の延長申請は、働けなくなった日(通常は離職日の翌日)から30日経過後、できるだけ早く行う必要があります。延長申請の期限は、働けない理由によって異なりますが、病気の場合は「働けなくなった日から最長3年間」です。

ただし、実際には働けない期間が30日を超えたことを確認してから申請するため、退職後1〜2か月以内に手続きを済ませるのが一般的です。申請が遅れると、その分受給期間が短くなるリスクがあるため、退職後早めに動くことが重要です。

申請場所と必要書類

申請先は、住所地を管轄するハローワークです。必要書類は以下の通りです。

  • 離職票(退職後、会社から郵送される)
  • 雇用保険被保険者証
  • 受給期間延長申請書(ハローワークで入手、または公式サイトからダウンロード)
  • 延長理由を証明する書類(医師の診断書、母子手帳など)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 印鑑
  • 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

延長理由を証明する書類として、うつ病や適応障害の場合は主治医の診断書が必要です。診断書には「〇年〇月〇日から療養が必要で、就労不可」といった内容を記載してもらいます。

申請の流れ

  1. ハローワークの窓口で「失業保険の受給期間延長をしたい」と伝える
  2. 必要書類を提出し、延長理由を説明
  3. ハローワークの職員が内容を確認し、延長が認められれば「受給期間延長通知書」が後日郵送される

この手続きにより、失業保険の受給期間が延長され、療養期間中は受給期間にカウントされなくなります。焦らず治療に専念できる環境が整います。

ステップ2:主治医と相談し「就労可能」な状態まで療養する

受給期間の延長申請が済んだら、次は療養に集中します。この期間は、無理に就職活動を考える必要はありません。

療養期間中の過ごし方

うつ病や適応障害からの回復には、個人差があります。数か月で職場復帰できる方もいれば、1年以上かかる方もいます。大切なのは、主治医の指示に従い、焦らず治療を続けることです。

療養期間中は以下のポイントを意識しましょう。

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 服薬を継続し、定期的に通院する
  • 無理のない範囲で軽い運動や散歩を取り入れる
  • 家族や友人とのコミュニケーションを大切にする
  • 復職に向けたリハビリ(デイケア、復職支援プログラムなど)を検討する

経済的な不安から、「早く働かなければ」と焦る気持ちが出てくるかもしれません。しかし、無理に復帰して再び体調を崩せば、療養期間がさらに長引き、結果的に失業保険の受給期間を使い切ってしまうリスクもあります。

傷病手当金を受給している場合、この期間の生活費はある程度確保できます。また、生活福祉資金貸付制度(社会福祉協議会が実施)など、低利または無利子で借りられる制度もあるため、どうしても生活が苦しい場合は市区町村の福祉窓口に相談しましょう。

「就労可能」の判断基準

失業保険を受給するには、「働く意思と能力がある」と認められる必要があります。この「働く能力」とは、フルタイムで健康な人と同じように働ける状態を意味するわけではありません。

主治医と相談し、以下のような状態になっていれば「就労可能」と判断される可能性が高いです。

  • 週に数日、短時間(4〜6時間)の勤務であれば可能
  • 負担の少ない職種であれば勤務可能
  • 通院を続けながらであれば勤務可能

完全に病気が治っていなくても、「働ける状態」にあると主治医が判断すれば、失業保険の受給対象となります。ハローワークでは、求職活動の内容や就職先の条件について、病状を考慮した対応をしてもらえます。

ステップ3:医師の意見書を持って延長解除と受給申請を行う

療養を経て「働ける」状態に回復したら、ハローワークで失業保険の受給手続きを開始します。

延長解除の手続き

まず、受給期間の延長を解除する手続きが必要です。これは、「もう働けない理由がなくなったので、失業保険の受給を始めたい」という意思表示です。

必要書類は以下の通りです。

  • 受給期間延長通知書(延長申請時にハローワークから郵送されたもの)
  • 医師の診断書または意見書(「就労可能」の旨が記載されたもの)
  • 離職票
  • 雇用保険被保険者証
  • 本人確認書類
  • 写真2枚
  • 印鑑
  • 預金通帳またはキャッシュカード

医師の診断書には、「〇年〇月〇日時点で、就労可能な状態に回復した」といった内容を記載してもらいます。この診断書が、失業保険の受給資格を証明する重要な書類となります。

失業保険の受給申請

延長解除の手続きと同時に、失業保険の受給申請も行います。ハローワークの窓口で「求職申込み」を行い、失業認定を受けます。

この際、以下の点を職員に伝えます。

  • うつ病(または適応障害)で退職したこと
  • 療養期間を経て、現在は就労可能な状態にあること
  • 特定理由離職者(給付制限なし)の認定を希望すること
  • 就職困難者(300日受給)の認定を希望すること

ハローワークの職員は、提出された診断書や離職票の退職理由を確認し、特定理由離職者および就職困難者に該当するか審査します。認定されれば、待機期間7日後から失業保険の受給が開始されます。

ステップ4:ハローワークの窓口で病状を正しく伝えるコツ

ハローワークでの手続きは、多くの方にとって緊張する場面です。特にうつ病や適応障害を抱えている場合、「冷たくあしらわれないか」「病気を理由に受給を拒否されないか」といった不安を感じることもあるでしょう。

しかし、ハローワークは失業者の支援を目的とした公的機関であり、適切な情報を伝えれば、必要な支援を受けられます。ここでは、窓口で病状を正しく伝え、スムーズに手続きを進めるコツを紹介します。

伝えるべきポイント

  1. 退職理由を明確に
    「うつ病で働けなくなり、退職しました」と簡潔に伝えます。詳しい経緯を長々と説明する必要はありません。
  2. 現在の状態を正直に
    「療養を経て、現在は短時間勤務であれば可能な状態です」など、現在の体調と働ける範囲を具体的に伝えます。
  3. 希望する支援を明示
    「特定理由離職者として、給付制限なしでの受給を希望します」「就職困難者として、300日間の給付を希望します」と、具体的に伝えましょう。
  4. 診断書や証明書類を用意
    口頭での説明だけでなく、医師の診断書や意見書を提示することで、信頼性が高まります。

避けるべき表現

  • 「まだ完全には治っていませんが…」→「療養により回復し、就労可能な状態です」
  • 「どうせ無理だと思いますが…」→「条件を満たしていると考えています」
  • 「お願いします」を連発する→落ち着いて、必要な情報を淡々と伝える

ハローワークの職員も人間ですから、対応には個人差があります。もし、対応に納得がいかない場合や、不当な扱いを受けたと感じた場合は、別の職員に相談するか、ハローワークの総合窓口に相談することも可能です。また、社会保険労務士や就労支援機関に同行を依頼することもできます。

大切なのは、「自分には受給する権利がある」という認識を持つことです。正当な手続きを踏んでいる限り、堂々と支援を求めて問題ありません。

300日受給(就職困難者)として認められる条件と必要書類

失業保険の給付日数を最大300日まで延ばすには、「就職困難者」として認定される必要があります。ここでは、その具体的な条件と手続き方法を詳しく解説します。

精神障害者保健福祉手帳がある場合の申請

精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、就職困難者としての認定がスムーズに進みます。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患(統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかん、発達障害など)を持つ方に交付される手帳です。障害の程度により1級から3級に区分されます。

この手帳を持っていると、以下のようなメリットがあります。

  • 税金の控除(所得税、住民税)
  • 公共交通機関の割引
  • 公共施設の利用料減免
  • 就労支援サービスの利用

失業保険においても、手帳を持っていることで「精神障害者」として就職困難者に該当し、給付日数が延長されます。

申請方法

ハローワークでの失業保険の受給手続き時に、以下の書類を提出します。

  • 離職票
  • 雇用保険被保険者証
  • 精神障害者保健福祉手帳のコピー
  • 本人確認書類
  • 写真2枚
  • 印鑑
  • 預金通帳またはキャッシュカード

手帳を提示することで、ハローワークは就職困難者として認定し、給付日数を決定します。手続きは比較的シンプルで、追加の診断書などは不要です。

手帳の等級と給付日数の関係

手帳の等級(1級、2級、3級)に関わらず、就職困難者として認定されれば、雇用保険の被保険者期間に応じて150日または300日の給付を受けられます。つまり、3級でも300日受給の対象となります。

ただし、手帳を持っていても、「働く意思と能力がある」と認められなければ失業保険は受給できません。あくまで「障害はあるが、何らかの仕事に就ける状態」であることが前提です。

手帳がない場合に医師に書いてもらうべき診断書の内容

精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、主治医の診断書によって就職困難者として認定される可能性があります。この場合、診断書の内容が非常に重要です。

診断書に記載すべき内容

ハローワークが就職困難者として認定するには、「精神障害により、就職が著しく困難である」ことが証明される必要があります。診断書には以下の内容を含めてもらいましょう。

  1. 病名
    うつ病、適応障害、双極性障害など、具体的な診断名
  2. 発症時期と治療経過
    いつ発症し、どのような治療を受けてきたか
  3. 現在の症状
    集中力の低下、不安感、不眠、意欲低下など、具体的な症状
  4. 就労への影響
    「長時間労働は困難」「ストレスの多い環境は避けるべき」など、就労上の制約
  5. 今後の見通し
    「継続的な治療とサポートにより、負担の少ない職種であれば就労可能」といった見解
  6. 就職困難の程度
    「精神障害により、一般的な求人への就職は著しく困難である」といった明示

診断書の例

【診断書】

氏名:山田太郎

生年月日:19XX年XX月XX日

診断名:うつ病(中等度)

上記の者は、20XX年X月より当院にて治療を継続しております。職場でのストレスにより発症し、退職後も抑うつ気分、意欲低下、不眠などの症状が持続しております。

現在、薬物療法および精神療法を実施しており、症状は軽快傾向にありますが、依然として長時間労働や対人ストレスの多い環境での就労は困難な状態です。

今後、継続的な治療と職場環境への配慮により、負担の少ない職種であれば段階的な就労が可能と考えられますが、一般的な求人への就職は著しく困難であり、就職困難者に該当すると判断します。

20XX年X月X日

医療機関名

医師名(印)

この診断書を持ってハローワークで手続きを行えば、就職困難者として認定される可能性が高まります。

診断書の費用

診断書の作成には、医療機関によって異なりますが、3,000円から10,000円程度の費用がかかります。保険適用外のため、全額自己負担です。しかし、この診断書により300日間の失業保険を受給できれば、十分にコストに見合う投資と言えるでしょう。

診断書を依頼するタイミング

診断書は、ハローワークでの失業保険受給手続きの際に必要です。療養期間の延長解除を行うタイミング、つまり「働ける状態に回復した」と主治医が判断した時点で、同時に就職困難者用の診断書も依頼すると効率的です。

主治医に依頼する際は、「失業保険の手続きで、就職困難者として認定を受けたいので、そのための診断書をお願いします」と具体的に伝えましょう。上記のような内容を含めてほしい旨を伝えれば、医師も適切な診断書を作成してくれます。

手帳取得も検討する

もし、今後も継続的な治療が必要で、就労上の配慮が必要な状態であれば、精神障害者保健福祉手帳の取得も検討すると良いでしょう。手帳があれば、失業保険だけでなく、税制優遇や就労支援サービスなど、さまざまなメリットを受けられます。

手帳の申請は、市区町村の障害福祉担当窓口で行います。主治医に診断書(手帳用)を書いてもらい、申請書とともに提出します。審査には1〜2か月かかりますが、認定されれば長期的な支援を受けられるため、安定した生活基盤の構築につながります。

うつ病での失業保険受給でよくある不安と注意点

失業保険の受給にあたり、多くの方が不安や疑問を抱えています。ここでは、よくある質問と、その解決策を紹介します。

ハローワークの窓口で冷たくあしらわれないための対策

「ハローワークの窓口で、病気を理由に受給を拒否されないか」「冷たい対応をされないか」という不安は、多くの方が感じるものです。実際、窓口の職員によって対応に差があるのも事実です。

しかし、以下の点を押さえておけば、適切な対応を受けられる可能性が高まります。

1. 事前に情報を整理しておく

窓口で説明に詰まると、職員も判断に困ります。以下の情報を事前にメモしておきましょう。

  • 退職日と退職理由
  • 病名と治療期間
  • 現在の体調と働ける範囲
  • 希望する支援内容(特定理由離職者、就職困難者)

2. 必要書類を漏れなく準備

診断書、離職票、手帳(ある場合)など、必要書類がすべて揃っていれば、手続きがスムーズに進みます。

3. 冷静に、淡々と伝える

感情的になったり、卑屈になったりせず、事実を淡々と伝えることが大切です。「〇〇で退職し、〇〇の診断を受けています。〇〇の支援を希望します」と、簡潔に話しましょう。

4. 対応に納得いかない場合の対処法

もし、職員の対応が不適切だと感じた場合、以下の方法があります。

  • その場で上席職員や相談窓口の責任者に相談を求める
  • 別の日に再度訪問し、別の職員に相談する
  • 社会保険労務士や就労支援機関に相談し、同行してもらう
  • ハローワークの苦情相談窓口(各都道府県労働局)に連絡する

ハローワークは公的機関であり、不当な扱いは許されません。正当な権利を主張することは、決して恥ずかしいことではありません。

受給中に再就職手当はもらえる?計算方法を解説

失業保険を受給中に就職が決まった場合、「再就職手当」を受け取れる可能性があります。これは、早期に就職した方へのボーナスのような制度です。

再就職手当とは

再就職手当は、失業保険の給付日数を一定以上残した状態で再就職した場合に、残りの給付日数に応じて一時金が支給される制度です。早期就職を促進するために設けられています。

支給条件

以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 失業保険の給付日数を3分の1以上残している
  2. 再就職先で1年以上雇用される見込みがある
  3. 再就職先が、離職前の事業主と関係ない
  4. 待機期間(7日間)満了後の就職である
  5. ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職、または自己応募である

支給額の計算方法

再就職手当の支給額は、残りの給付日数によって異なります。

  • 給付日数を3分の2以上残している場合:残日数×基本手当日額×70%
  • 給付日数を3分の1以上、3分の2未満残している場合:残日数×基本手当日額×60%

具体例

Bさん(35歳、男性)の場合

  • 失業保険の給付日数:300日
  • 基本手当日額:6,000円
  • 受給開始から100日目に就職が決定(残日数200日)

残日数200日は、給付日数300日の3分の2以上なので、70%の支給率が適用されます。

再就職手当=200日×6,000円×70%=840,000円

Bさんは、再就職により84万円の一時金を受け取れます。

就職困難者の場合の注意点

就職困難者として300日受給している場合でも、再就職手当は受け取れます。むしろ、給付日数が多い分、早期就職による再就職手当も高額になります。

ただし、再就職手当を受け取るには、再就職先で1年以上雇用される見込みが必要です。短期のアルバイトや、試用期間のみの雇用では対象外となります。

また、再就職後、すぐに退職してしまうと、再就職手当の返還を求められる場合もあります。無理に早期就職を目指すのではなく、自分の体調に合った職場をじっくり探すことが大切です。

万が一病気が再発して再退職した時の再受給について

うつ病や適応障害は、再発のリスクがある疾患です。もし、再就職後に病気が再発し、再び退職することになった場合、失業保険を再度受給できるのでしょうか。

再受給の条件

失業保険は、以下の条件を満たせば、何度でも受給できます。

  1. 再就職先で雇用保険に加入している
  2. 雇用保険に通算して12か月以上加入している(離職日から遡って2年間)
  3. 失業状態にある(働く意思と能力があるが、就職できない)

たとえば、前職を退職後、失業保険を300日受給し、その後再就職して2年間勤務した場合、再退職すれば再度失業保険を受給できます。

前回と同じ優遇措置を受けられるか

再退職の理由が再びうつ病や適応障害であれば、前回と同様に特定理由離職者や就職困難者として認定される可能性があります。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 就職困難者として認定されるには、再度診断書や手帳の提出が必要
  • 雇用保険の加入期間が短い場合、給付日数が短くなる可能性がある

たとえば、再就職先で1年間勤務した後に退職した場合、被保険者期間は1年なので、就職困難者として認定されても給付日数は150日となります(300日受給には被保険者期間1年以上が必要ですが、前職の期間は通算されない場合があるため、ハローワークで確認が必要です)。

再発を防ぐための工夫

再就職後に病気が再発しないよう、以下の点に注意しましょう。

  • 自分の体調に合った職場を選ぶ(残業が少ない、ストレスが少ない環境)
  • 就職後も主治医との通院を継続する
  • 職場に病状を適切に伝え、配慮を求める
  • 障害者雇用枠や、精神障害者を支援する企業への就職を検討する
  • 就労支援機関(就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなど)のサポートを受ける

無理に一般の求人に応募するのではなく、自分の状態に合った働き方を選ぶことが、長期的な安定につながります。

まとめ:焦らず制度を活用して心身の回復を最優先に

うつ病や適応障害で退職した方にとって、失業保険は生活を支える重要な制度です。正しい手順を踏めば、最大300日間の給付を受けながら、焦らず療養と就職活動に取り組むことができます。

この記事で解説した内容を改めて整理します。

失業保険で受けられる優遇措置

  • 就職困難者として認定されれば、給付日数が最大300日に延長
  • 特定理由離職者として認定されれば、自己都合退職でも給付制限なし
  • 国民健康保険料の軽減措置により、退職後の負担を軽減

今すぐ働けない時の対応

  • 受給期間の延長申請を行い、最大3年間受給期間を延ばす
  • 働けない状態での受給は不正受給のリスクがあるため、必ず延長申請を
  • 傷病手当金を先に受給し、回復後に失業保険を受給する流れが理想

受給のための具体的なステップ

  1. ハローワークで受給期間の延長申請
  2. 療養に専念し、「就労可能」な状態まで回復
  3. 医師の意見書を持って延長解除と受給申請
  4. ハローワークで病状を正しく伝え、特定理由離職者・就職困難者の認定を受ける

300日受給の条件

  • 精神障害者保健福祉手帳がある場合:手帳のコピーを提出
  • 手帳がない場合:主治医の診断書で「就職困難」を証明

よくある不安への対策

  • ハローワークでの対応に不安がある場合:事前準備と冷静な説明、必要なら支援機関の同行を
  • 再就職手当は、給付日数を残した状態で就職すれば受け取れる
  • 病気が再発しても、条件を満たせば再度受給可能

うつ病や適応障害からの回復には時間がかかります。焦って無理に働こうとすれば、症状が悪化し、さらに長期の療養が必要になるかもしれません。失業保険をはじめとする社会保障制度は、まさにこうした状況にある方を支えるために存在します。

「早く働かなければ」というプレッシャーを一旦手放し、まずは心身の回復を最優先にしてください。体調が整えば、自然と前向きな気持ちも戻ってきます。その時に、失業保険の支援を受けながら、自分に合った職場をじっくり探せばいいのです。

制度を正しく理解し、一つひとつ手続きを進めていけば、必ず道は開けます。一人で悩まず、ハローワーク、主治医、就労支援機関など、利用できるリソースをすべて活用しましょう。あなたの回復と、新たな一歩を心から応援しています。

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