「障害があるけれど、失業保険はちゃんともらえるのだろうか」「健常者と同じ条件で手続きしなければいけないのか」と不安に感じていませんか?実は、障害のある方は雇用保険制度において「就職困難者」として位置づけられており、一般の受給者よりも手厚い保護を受けられる仕組みが用意されています。
障害者が就職困難者に認定されると、給付日数が最大360日まで延長され、雇用保険の加入期間がわずか6ヶ月でも受給資格を得られるなど、大きなメリットがあります。また、自己都合退職であっても給付制限期間が免除されるケースがあり、離職後すぐに給付を受けられる可能性もあるのです。
この記事では、障害者が失業保険を受給するための具体的な条件、必要な手続き、そして「障害者手帳を持っていない場合」でも認定される可能性があるケースまで、詳しく解説していきます。読み終える頃には、ハローワークでどのように申請すればよいか、どんな書類を準備すべきかが明確になり、安心して手続きに臨めるはずです。
障害者は失業保険の「就職困難者」として優遇される

雇用保険制度では、障害者を含む一部の求職者を「就職困難者」として特別に扱っています。この就職困難者に該当すると、一般の受給者と比べて給付内容が大幅に優遇されるため、障害のある方にとっては非常に重要な制度です。
一般の受給者と就職困難者の大きな違い
まず押さえておきたいのが、一般の受給者と就職困難者では、失業保険の給付日数や受給資格の要件が大きく異なるという点です。
一般の受給者の場合、所定給付日数は離職理由や年齢、雇用保険の加入期間によって90日から最大150日程度となります。また、雇用保険への加入期間は原則として「離職前2年間のうち12ヶ月以上」が必要です。さらに、自己都合退職の場合は7日間の待機期間に加えて、2ヶ月から3ヶ月の給付制限期間が設けられるため、実際に給付を受け始めるまでに時間がかかります。
一方、就職困難者として認定された場合、これらの条件が大幅に緩和されます。給付日数は最大360日まで延長され、加入期間の要件も「6ヶ月以上」に短縮されます。また、障害を理由とした離職であれば、自己都合退職であっても給付制限がかからないケースが多いのです。
この違いは、障害のある方が再就職に向けてより長い準備期間を確保し、経済的な不安を軽減しながら求職活動を行えるよう配慮されたものです。
メリット1:所定給付日数が最大360日と大幅に増える
就職困難者として認定された場合の最大のメリットは、所定給付日数が大幅に増えることです。
具体的には、雇用保険の加入期間が1年以上の場合、45歳未満であれば300日、45歳以上65歳未満であれば360日の給付を受けられます。加入期間が1年未満であっても、6ヶ月以上あれば150日の給付が受けられるのです。
一般の受給者の場合、自己都合退職で加入期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満でも120日、20年以上でようやく150日となります。会社都合退職であっても、年齢や加入期間によって90日から330日の範囲に留まります。
この違いを具体的な数字で比較してみましょう。たとえば、40歳で雇用保険に5年間加入していた方が自己都合で退職した場合、一般の受給者であれば給付日数は90日です。しかし、就職困難者として認定されれば300日となり、3倍以上の期間にわたって給付を受けられることになります。
失業保険の給付額は離職前の賃金によって決まりますが、仮に日額6,000円だとすると、一般受給者なら総額54万円、就職困難者なら180万円となり、その差は126万円にもなります。この経済的な支えがあることで、焦らずに自分に合った仕事を探すことができるのです。
メリット2:雇用保険の加入期間が「6ヶ月」でも受給可能
雇用保険を受給するためには、一定期間以上の加入実績が必要です。一般の受給者の場合、原則として「離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上」という条件があります。
しかし、就職困難者として認定されれば、この要件が「離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算6ヶ月以上」に緩和されます。つまり、雇用保険に加入してから半年が経過していれば、失業保険を受給できる可能性があるということです。
この緩和措置は、障害のある方が短期間の就労しかできなかった場合でも、セーフティネットとして失業保険を活用できるように設計されています。
たとえば、障害の特性に配慮してもらえる職場を見つけて働き始めたものの、体調の変化や職場環境の問題で8ヶ月で退職せざるを得なくなったケースを考えてみましょう。一般の受給者であれば、12ヶ月の加入期間を満たしていないため失業保険を受給できません。しかし、就職困難者として認定されれば、8ヶ月の加入期間で受給資格を得られるのです。
この制度により、障害のある方が安心して就労にチャレンジでき、たとえ短期間で離職することになっても、次のステップに向けた経済的な支援を受けられる環境が整っています。
失業保険における「就職困難者」の認定条件
障害者が就職困難者として認定されるためには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、具体的にどのような場合に就職困難者と認められるのかを詳しく見ていきましょう。
障害者手帳(身体・知的・精神)を所持している場合
最も明確でわかりやすいのが、障害者手帳を所持しているケースです。身体障害者手帳、療育手帳(知的障害者手帳)、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っていれば、原則として就職困難者として認定されます。
身体障害者手帳は、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内部障害など、身体機能に障害がある方に交付されます。等級は1級から6級まであり、障害の程度によって分類されていますが、失業保険の就職困難者認定においては、基本的にどの等級であっても対象となります。
療育手帳は、知的障害のある方に交付される手帳です。自治体によって名称が異なる場合があり、「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ばれることもあります。こちらも等級に関わらず、手帳を所持していれば就職困難者として認定されます。
精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症、うつ病、双極性障害、発達障害などの精神疾患がある方に交付されます。1級から3級まであり、こちらも等級を問わず就職困難者の対象です。
ハローワークで失業保険の手続きを行う際、これらの手帳を提示すれば、スムーズに就職困難者としての認定を受けられます。手帳の原本を持参し、窓口で「障害者手帳を持っている」ことを伝えましょう。
障害者手帳がない場合も医師の診断書で認められる可能性がある
「障害はあるけれど、手帳は取得していない」という方もいるでしょう。実は、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書によって就職困難者として認定される可能性があります。
雇用保険制度における就職困難者の定義には、「身体または精神に障害があるため、職業に就くことが著しく困難な者」という文言があります。つまり、手帳の有無ではなく、実際に障害があり、それが就労に大きな影響を与えているかどうかが判断基準となるのです。
たとえば、以下のようなケースでは、医師の診断書を基に就職困難者として認定される可能性があります。
- 難病を抱えており、定期的な通院や治療が必要で、フルタイム勤務が困難な状態
- 精神疾患があるが、手帳の等級には該当しない、または手帳取得の手続き中である
- 発達障害の診断を受けており、職場での配慮が必要だが、手帳は持っていない
- 身体的な障害があるが、手帳の等級には該当しない軽度の状態
ただし、この場合は障害者手帳を提示するケースと比べて、認定までに時間がかかったり、追加の書類提出を求められたりすることがあります。ハローワークの判断によっては、労働局への照会が必要になる場合もあるため、早めに相談することをおすすめします。
医師の診断書には、具体的な病名、障害の内容、就労に与える影響、必要な配慮事項などが記載されている必要があります。主治医に「失業保険の申請に使用する」旨を伝えて作成してもらいましょう。診断書の作成には数千円の費用がかかることが一般的ですが、この投資によって給付日数が大幅に増える可能性があることを考えれば、十分に価値があると言えます。
障害者が失業保険を受給するために必要な3つの条件
就職困難者として認定されるだけでは、失業保険を受給できません。失業保険の基本的な受給条件を満たす必要があります。ここでは、障害者が失業保険を受給するために必要な3つの重要な条件を解説します。
1. 雇用保険に一定期間加入していること
前述の通り、就職困難者の場合は「離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上」あることが条件です。この「被保険者期間」とは、雇用保険に加入していた期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月、または労働時間が80時間以上ある月のことを指します。
たとえば、ある月に15日間勤務して給与が支払われた場合、その月は1ヶ月分としてカウントされます。一方、体調不良で5日間しか出勤できなかった月は、カウントされません。
パートやアルバイトで働いていた場合でも、週20時間以上の勤務で雇用保険に加入していれば、この条件を満たす可能性があります。「自分は正社員じゃなかったから無理だ」と諦める前に、まずは雇用保険に加入していたかどうかを確認しましょう。
雇用保険の加入状況は、給与明細に「雇用保険料」の項目があるかどうかで確認できます。また、退職時に会社から「離職票」が送られてきますが、この離職票にも加入期間が記載されています。
2. 「いつでも働ける状態」にあること(障害年金との併給)
失業保険は、「働く意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態」にある人に支給されます。つまり、健康状態や障害の程度にかかわらず、「仕事を探していて、仕事に就ける状態」である必要があるのです。
「障害があるのに、働ける状態と言えるのか」と疑問に思うかもしれません。しかし、ここで言う「働ける状態」とは、必ずしもフルタイムで健常者と同じように働けることを意味するわけではありません。たとえば、以下のような状態であれば、「働ける状態」と認められます。
- 週20時間程度のパートタイムであれば勤務可能
- 通院や服薬管理をしながら、在宅勤務なら仕事ができる
- 短時間勤務や配慮のある環境であれば就労可能
逆に、「完全に寝たきりで外出できない」「医師から絶対安静を指示されている」「入院中である」といった状態では、失業保険を受給できません。このような場合は、後述する「受給期間の延長」を申請することで、働ける状態になってから給付を受けることができます。
また、障害年金を受給している方からよく「障害年金をもらっているけど、失業保険ももらえるの?」という質問があります。答えは「イエス」です。障害年金と失業保険は別の制度ですので、両方を同時に受給することが可能です。
障害年金は、障害によって労働能力が制限されている方の生活を支えるための制度で、働いているかどうかに関わらず受給できます。一方、失業保険は、働く意思と能力があるのに仕事がない状態を支援する制度です。「障害はあるが、配慮があれば働ける」という状態であれば、両方を受給する権利があるのです。
3. ハローワークで求職活動を行う意思があること
失業保険を受給するためには、定期的にハローワークに通い、求職活動を行う必要があります。具体的には、4週間に1度の「失業認定日」にハローワークへ出向き、その間に行った求職活動を報告しなければなりません。
求職活動とは、以下のような活動を指します。
- 求人への応募
- ハローワークの職業相談や職業紹介
- 企業説明会や面接への参加
- 就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターでの相談
- 公共職業訓練や求職者支援訓練への参加
障害のある方の場合、一般的な求人サイトだけでなく、障害者向けの就労支援サービスを利用することも求職活動として認められます。たとえば、就労移行支援事業所での訓練や、障害者雇用を専門とする人材紹介会社への登録なども、きちんと記録を残せば求職活動としてカウントされます。
「体調が安定せず、頻繁にハローワークに行くのが難しい」という場合でも、事前に相談すれば配慮してもらえることがあります。たとえば、認定日を午前中の体調が良い時間帯に設定してもらう、郵送での手続きを認めてもらう、といった対応が可能なケースもあります。
重要なのは、「働きたいという意思を持って、実際に行動している」ことを示すことです。完璧な求職活動である必要はありません。自分のペースで、できる範囲で活動していることを誠実に報告すれば、失業保険の受給は継続されます。
離職理由による違い!自己都合でも給付制限がなくなるケース
失業保険を受給する際、離職理由は給付の開始時期に大きく影響します。特に障害者の場合、自己都合退職であっても給付制限がかからないケースがあるため、正しく理解しておくことが重要です。
障害による「正当な理由のある自己都合退職」とは
通常、自己都合で退職した場合、7日間の待機期間の後、さらに2ヶ月から3ヶ月の給付制限期間が設けられます。しかし、「正当な理由のある自己都合退職」に該当する場合は、この給付制限期間が免除され、待機期間の7日間が経過すればすぐに給付を受けられます。
障害者の場合、以下のような理由で退職した場合は「正当な理由のある自己都合退職」と認められる可能性が高くなります。
障害の悪化や体調不良による退職 障害の症状が悪化したり、新たな疾患が発症したりして、現在の仕事を続けることが困難になった場合です。たとえば、立ち仕事をしていたが腰痛が悪化して立位での作業が難しくなった、うつ病の症状が重くなり通勤が困難になった、といったケースが該当します。
職場で必要な配慮が得られなかった場合 障害者雇用促進法では、事業主に対して「合理的配慮の提供」が義務付けられています。しかし、実際には配慮を求めても応じてもらえなかったり、口頭では約束されても実行されなかったりするケースがあります。このような状況で、働き続けることが困難になって退職した場合、正当な理由があると認められる可能性があります。
通院や治療との両立が困難になった場合 定期的な通院や治療が必要な障害・疾患を抱えている場合、仕事と治療の両立が難しくなることがあります。会社に通院のための時間的配慮を求めたが認められなかった、業務の都合で通院時間を確保できなくなった、といった理由での退職は、正当な理由として認められやすくなります。
職場でのいじめや差別を受けた場合 障害を理由に差別的な扱いを受けたり、いじめやハラスメントを受けたりして退職せざるを得なくなった場合も、正当な理由があると認められます。このケースでは、できる限り証拠(メールのやりとり、録音、同僚の証言など)を残しておくことが望ましいです。
これらの理由で退職した場合、離職票の「離職理由」欄に正しく記載されているか確認しましょう。もし会社側が単なる「自己都合」として処理していても、ハローワークで事情を説明し、医師の診断書などの証拠を提出すれば、離職理由が変更される可能性があります。
特定理由離職者に認定されれば待機期間後すぐにもらえる
「特定理由離職者」とは、正当な理由のある自己都合退職をした方を指す公式な区分です。特定理由離職者に認定されると、以下のメリットがあります。
給付制限期間がない 自己都合退職でも、7日間の待機期間が終われば、すぐに失業保険の給付が始まります。通常の自己都合退職では2〜3ヶ月待たなければならないことを考えると、これは大きなメリットです。
所定給付日数が増える可能性がある 特定理由離職者のうち、一定の要件を満たす場合は、会社都合退職と同様の所定給付日数が適用されることがあります。ただし、就職困難者として認定される場合は、そちらの給付日数(最大360日)の方が有利なため、実質的にはあまり影響はありません。
雇用保険の加入期間要件が緩和される 通常、自己都合退職の場合は「離職前2年間に12ヶ月以上」の加入期間が必要ですが、特定理由離職者は「離職前1年間に6ヶ月以上」に緩和されます。就職困難者の要件と同じですので、どちらかの条件を満たせば受給資格が得られることになります。
特定理由離職者として認定してもらうためには、離職理由を証明する資料を準備することが重要です。医師の診断書、会社とのやりとりの記録、障害者手帳などを持参して、ハローワークの窓口で詳しく事情を説明しましょう。
窓口の担当者によっては、障害者の置かれた状況への理解が十分でない場合もあります。もし最初の説明で納得してもらえなかった場合は、「もう一度詳しく説明させてください」と粘り強く伝えることが大切です。必要であれば、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関に同行してもらうことも検討しましょう。
障害者が失業保険を申請する際の手続きと必要書類
ここからは、実際に失業保険を申請する際の具体的な手続きと、準備すべき書類について解説します。
ハローワークへ持参するべき書類チェックリスト
失業保険の申請には、以下の書類が必要です。事前にしっかり準備しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
1. 離職票(雇用保険被保険者離職票-1および-2) 退職した会社から郵送されてくる書類です。通常、退職後10日前後で届きますが、会社の処理が遅れることもあります。2週間以上経っても届かない場合は、会社に連絡して確認しましょう。
離職票には、退職理由、雇用保険の加入期間、離職前の賃金額などが記載されています。内容に間違いがないか、特に離職理由が正しく記載されているかを必ず確認してください。
2. 個人番号(マイナンバー)確認書類 マイナンバーカード、または通知カードと身分証明書(運転免許証、パスポートなど)が必要です。
3. 身元確認書類 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、顔写真付きの公的証明書を1点用意します。顔写真付きの身分証明書がない場合は、健康保険証と住民票など、2点以上の組み合わせが必要です。
4. 写真2枚 縦3cm×横2.5cmの証明写真が2枚必要です。最近3ヶ月以内に撮影したもので、正面を向いた上半身の写真を準備しましょう。スピード写真機で撮影したものでも問題ありません。
5. 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード 失業保険の給付金が振り込まれる口座を登録するために必要です。一部のネット銀行は対応していない場合があるため、事前にハローワークに確認することをおすすめします。
6. 印鑑 認印で構いません。シャチハタは不可の場合が多いため、朱肉を使うタイプの印鑑を持参しましょう。
障害者として就職困難者の認定を受けるための追加書類
上記の基本書類に加えて、就職困難者として認定してもらうためには、以下のいずれかの書類が必要です。
7. 障害者手帳(原本) 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持参します。コピーではなく、必ず原本を持っていきましょう。窓口で確認後、返却されます。
8. 医師の診断書または意見書(手帳がない場合) 障害者手帳を持っていない場合は、主治医に作成してもらった診断書を提出します。診断書には、病名、障害の内容、就労への影響、必要な配慮事項などが記載されている必要があります。
診断書の作成には通常3,000円〜5,000円程度の費用がかかりますが、これによって給付日数が大幅に増える可能性を考えれば、必要な投資と言えるでしょう。
9. その他、離職理由を証明する書類(該当する場合) 特定理由離職者として認定してもらいたい場合は、退職に至った経緯を証明する資料を準備します。たとえば、会社とのメールのやりとり、産業医の意見書、障害者雇用促進法に基づく配慮の申し出とその回答の記録などが該当します。
窓口で「障害があること」を必ず伝えるべき理由
ハローワークで手続きをする際、最も重要なのが「自分に障害があり、就職困難者としての認定を希望している」ことを明確に伝えることです。
実は、障害者手帳を持っていても、それを提示しなければ一般の受給者として処理されてしまうケースがあります。ハローワークの担当者は、提出された書類を見て機械的に処理することが多いため、手帳を持っているかどうかを積極的に確認してくれるとは限りません。
また、初回の手続きで障害のことを伝えそびれてしまうと、後から変更するのが難しくなることがあります。一度「一般受給者」として登録されてしまうと、「やはり就職困難者として認定してほしい」と申し出ても、手続きが煩雑になったり、遡っての変更ができなかったりする可能性があるのです。
そのため、ハローワークに行ったら、受付や窓口で最初に「障害者手帳を持っているので、就職困難者としての手続きをお願いします」とはっきり伝えましょう。手帳がない場合も、「障害があり、医師の診断書を持参しています。就職困難者として認定していただけるか相談したいです」と伝えることが大切です。
窓口での対応に不安がある場合は、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所のスタッフに同行してもらうことも検討しましょう。支援者が一緒にいることで、スムーズに手続きが進むことがあります。
また、ハローワークには「障害者窓口」が設置されている場合が多くあります。一般の窓口ではなく、障害者専門の窓口で相談することで、より適切なアドバイスや配慮を受けられる可能性が高まります。受付で「障害者窓口はありますか?」と尋ねてみましょう。
もっと有利に!再就職時や受給中のセーフティネット
失業保険の基本的な受給だけでなく、再就職時や受給中に活用できる制度があります。これらを知っておくことで、より安心して求職活動を進められます。
早期就職でもらえる「常用就職支度手当」
失業保険を受給している間に再就職が決まった場合、通常は「再就職手当」という一時金を受け取ることができます。しかし、障害者を含む就職困難者の場合は、この再就職手当に代わって「常用就職支度手当」という制度が適用されるケースがあります。
再就職手当は、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合に、残りの給付日数の一部を一時金として受け取れる制度です。しかし、障害者の場合は、より長期的な就労が難しい場合があることを考慮して、「常用就職支度手当」という別の制度が用意されています。
常用就職支度手当の対象となる条件
- 就職困難者として認定されている
- 1年以上継続して雇用されることが確実な職業に就いた
- 所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上を残して就職した
- 離職前の事業主に再び雇用されたものではない
- 待機期間満了後の就職である
- 給付制限期間中の就職の場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職である
支給額の計算方法 常用就職支度手当の支給額は、以下の計算式で算出されます。
支給額 = 基本手当日額 × 90日 × 40%
たとえば、基本手当日額が6,000円の場合、6,000円 × 90日 × 40% = 216,000円となります。
再就職手当と比較すると金額は少なくなりますが、就職困難者の場合は所定給付日数が長いため、早めに就職しても一定の手当を受け取れる仕組みになっています。
再就職先で働き始めてから1ヶ月以内にハローワークに申請する必要があるため、就職が決まったらすぐに手続きをしましょう。
体調悪化で働けない時は「受給期間の延長」を申請
失業保険には「受給期間」という概念があります。通常、受給期間は離職日の翌日から1年間と定められており、この期間内に所定給付日数分の給付を受け取る必要があります。
しかし、病気やケガ、障害の悪化などで30日以上働けない状態が続く場合、受給期間を最大3年間(合計4年間)延長することができます。
受給期間延長の対象となるケース
- 病気やケガで療養中
- 妊娠、出産、育児(ただし、3歳未満の子がいる場合)
- 障害の悪化により就労できない状態
- 親族の介護が必要になった
- 海外勤務の配偶者に同行する必要がある
障害者の場合、離職後に障害が悪化したり、精神的に不安定になって就職活動ができない状態になったりすることがあります。そのような時は、無理に求職活動を続けるのではなく、受給期間の延長を申請して、治療やリハビリに専念することができます。
申請のタイミングと方法 受給期間の延長は、働けない状態が30日を超えた時点から申請できます。ただし、働けない状態が終わってから1ヶ月以内に申請しなければならないため、注意が必要です。
申請は、住所地を管轄するハローワークに以下の書類を提出します。
- 受給期間延長申請書(ハローワークで入手)
- 離職票
- 延長理由を証明する書類(医師の診断書など)
体調が回復して「そろそろ働けそうだ」と思ったら、ハローワークに連絡して失業保険の受給手続きを開始します。延長期間中は給付金は支給されませんが、働ける状態になってから、本来の所定給付日数分の給付を受けられます。
この制度を知っておくことで、「今は働けないけど、失業保険の期間が過ぎてしまう」という焦りから無理をすることを避けられます。自分の体調と向き合いながら、適切なタイミングで求職活動を再開できるのです。
就労移行支援や職業訓練との併用について
失業保険を受給しながら、就労移行支援事業所に通ったり、職業訓練を受けたりすることもできます。これらのサービスを活用することで、スキルアップをしながら給付を受けられるため、非常に有効な選択肢です。
就労移行支援との併用 就労移行支援は、障害者総合支援法に基づくサービスで、一般企業への就職を目指す障害者が、働くために必要なスキルや知識を身につけることができる福祉サービスです。
就労移行支援事業所に通所すること自体が求職活動として認められるため、失業保険を受給しながら通うことができます。事業所での訓練内容や通所状況を失業認定申告書に記入すれば、求職活動実績としてカウントされます。
ただし、就労移行支援は週20時間以上の利用が基本となっており、「いつでも働ける状態」という失業保険の要件と矛盾しないか心配になるかもしれません。実際には、就労移行支援は就職に向けた準備活動として認められるため、併用に問題はありません。
公共職業訓練との併用 ハローワークが実施する公共職業訓練(ハロートレーニング)を受講する場合、訓練期間中は失業保険の給付日数が延長されます。たとえば、6ヶ月間の訓練コースに通う場合、その6ヶ月間は給付が継続され、さらに訓練修了後も残りの給付日数分を受け取れます。
障害者向けの職業訓練コースもあり、ITスキル、事務スキル、軽作業スキルなど、さまざまな内容が用意されています。ハローワークの障害者窓口で相談すれば、自分に合った訓練コースを紹介してもらえます。
訓練期間中は、訓練受講手当や通所手当(交通費)も支給されるため、経済的な負担を軽減しながらスキルアップできる非常にメリットの大きい制度です。
求職者支援制度との併用 雇用保険の受給資格がない方や、受給期間が終了した方向けには「求職者支援制度」という制度があります。こちらは失業保険の受給資格がない方向けですが、一定の要件を満たせば、訓練期間中に月額10万円の職業訓練受講給付金を受け取りながら訓練を受けることができます。
障害者の場合、短期間の就労しかできなかったために失業保険の受給資格を得られなかった方や、受給期間が終了してもまだ就職先が見つかっていない方にとって、この制度は大きな助けとなります。
まとめ
障害者が失業保険を受給する際は、「就職困難者」として認定されることで、一般の受給者よりも大幅に手厚い支援を受けられます。給付日数は最大360日まで延長され、雇用保険の加入期間も6ヶ月以上で受給資格を得られるなど、障害のある方が安心して求職活動に取り組める環境が整っています。
障害者手帳を持っている方は、ハローワークでの手続きの際に必ず手帳を提示し、「就職困難者としての認定を希望する」ことを明確に伝えましょう。手帳を持っていない場合でも、医師の診断書によって認定される可能性がありますので、諦めずに相談してみてください。
また、障害を理由とした退職の場合、自己都合退職であっても給付制限がかからないケースが多くあります。離職理由を正しく申告し、必要な証拠書類を準備することで、待機期間の7日間が過ぎればすぐに給付を受けられる可能性があります。
失業保険は、単に給付金を受け取るだけでなく、就労移行支援や職業訓練との併用、早期就職時の手当、体調不良時の受給期間延長など、さまざまなセーフティネットが用意されています。これらの制度を上手に活用することで、焦らずに自分に合った仕事を見つけることができるでしょう。
ハローワークでの手続きに不安がある場合は、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所のスタッフに相談したり、同行してもらったりすることも検討してください。支援者の力を借りながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
障害があっても、働く権利と、働けない時に支援を受ける権利は、誰にでも平等に保障されています。自分の権利をしっかりと理解し、活用することで、より安心して次のステップに進むことができるはずです。
