「早く仕事が決まったら、失業保険がもらえなくなって損をするんじゃないか」と不安に感じていませんか?実は、失業保険を最後まで受け取るよりも、早期に再就職して「再就職手当」を受け取ったほうが、経済的にも精神的にもメリットが大きいケースがほとんどです。
再就職手当は、失業保険の受給者が早期に安定した職業に就いた場合に支給される一時金です。残りの失業保険の給付日数に応じて、基本手当日額の60%または70%がまとめて支給されます。つまり、新しい職場からの給与に加えて、まとまった金額の手当も受け取れるため、トータルの収入は失業保険を受け続けるよりも多くなるのです。
ただし、再就職手当を受給するには8つの条件を満たす必要があり、特に「失業保険の残日数が3分の1以上残っていること」や「1年以上の雇用が見込まれること」などの要件を理解しておかないと、申請時に戸惑ってしまいます。また、申請のタイミングや必要書類を間違えると、せっかくの手当が受け取れなくなる可能性もあります。
本記事では、再就職手当をもらうための具体的な条件、いくらもらえるのかの計算方法、申請の流れ、そして「早期就職と失業保険の受給継続、どちらが得なのか」という疑問に対する答えを、シミュレーションを交えて分かりやすく解説します。この記事を読めば、自信を持って早期再就職に踏み出せるはずです。
再就職手当とは?失業保険を使い切るよりお得な理由

再就職手当は、雇用保険の失業等給付の一つで、正式には「就業促進手当」の中の「再就職手当」と呼ばれています。失業保険(基本手当)の受給者が、早期に安定した職業に就職した場合、または事業を開始した場合に支給される一時金です。
早期就職を支援する「お祝い金」のような制度
再就職手当の目的は、失業者が一日も早く再就職できるよう後押しすることにあります。失業保険を受給している間は、毎月一定額の基本手当が支給されますが、それを最後まで受け取ろうとすると、就職活動が長引いてしまう可能性があります。特に「まだ失業保険が残っているから、もう少し待ってから就職しよう」と考えてしまうと、結果的にキャリアのブランクが長くなり、再就職の難易度が上がってしまうこともあります。
そこで国は、早期に再就職した人に対して「お祝い金」のような形で、残っている失業保険の一部をまとめて支給する制度を設けました。これにより、失業者は「早く決まると損をする」という心理的なハードルを乗り越えやすくなり、積極的に就職活動に取り組めるようになります。
実際、再就職手当の制度が導入されてから、失業者の平均失業期間は短縮傾向にあります。厚生労働省の統計によれば、再就職手当の受給者は年間約30万人を超えており、多くの人がこの制度を活用して早期再就職を実現しています。
給与+手当でトータルの収入が増えるメリット
再就職手当の最大のメリットは、新しい職場からの給与に加えて、まとまった金額の一時金を受け取れることです。失業保険を最後まで受け取る場合と比較すると、トータルの収入が大きく変わります。
例えば、失業保険の基本手当日額が6,000円、所定給付日数が90日の場合を考えてみましょう。失業保険を最後まで受け取ると、合計で54万円(6,000円×90日)を受給できます。しかし、この間は無職の状態が続くため、給与収入はゼロです。
一方、30日目に再就職が決まり、残りの給付日数が60日ある状態で再就職手当を申請した場合、残日数が3分の2以上残っているため、基本手当日額の70%が支給されます。計算すると、6,000円×70%×60日=25万2,000円の再就職手当を受け取れます。
さらに、新しい職場で月給25万円をもらえるとすると、失業保険を受け取り続けた場合の2ヶ月間(残り60日分)の収入はゼロですが、再就職した場合は給与50万円(25万円×2ヶ月)+再就職手当25万2,000円=75万2,000円となります。失業保険のみの場合は36万円(6,000円×60日)なので、その差は約39万円にもなります。
このように、早期に再就職することで、給与と再就職手当の「二重取り」ができるため、経済的に大きなメリットがあるのです。また、仕事に就くことで社会保険にも加入できるため、医療費の自己負担割合が下がったり、将来の年金受給額が増えたりといった副次的なメリットも得られます。
さらに精神的な面でも、無職の状態が長引くことによる不安やストレスから解放され、新しい環境でキャリアを積んでいけるという前向きな気持ちを持てるようになります。経済的な安定と精神的な安心、この両方を得られることが、再就職手当の大きな魅力といえるでしょう。
再就職手当をもらうための8つの必須条件
再就職手当は、誰でももらえるわけではありません。厚生労働省が定める8つの条件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると受給できないため、就職活動中からしっかり確認しておくことが重要です。
【重要】失業保険の残日数が3分の1以上あること
再就職手当を受給するための最も基本的な条件が、失業保険の「所定給付日数」の3分の1以上を残して就職することです。これは、早期就職を促進するための制度であるため、ある程度の給付日数が残っていないと対象にならないという考え方に基づいています。
例えば、所定給付日数が90日の場合、30日以上残っている状態で就職すれば対象となります。120日の場合は40日以上、150日の場合は50日以上が必要です。この計算には、7日間の待期期間や給付制限期間は含まれず、純粋に「基本手当を受給できる日数」がカウントされます。
注意すべきは、この「残日数」の考え方です。失業保険の受給期間は、離職日の翌日から1年間(所定給付日数が330日以上の場合は1年+α)と決まっています。そのため、就職活動を先延ばしにして受給期間の満了日が近づいてしまうと、たとえ給付日数が残っていても再就職手当の対象外になる可能性があります。
実務的には、ハローワークで失業認定を受ける際に配布される「雇用保険受給資格者証」に記載されている「残日数」を確認するのが確実です。この残日数が所定給付日数の3分の1以上、できれば3分の2以上残っている状態で就職できれば、より多くの再就職手当を受け取れます。
7日間の「待期期間」を過ぎてからの就職か
失業保険の受給申請をすると、最初の7日間は「待期期間」と呼ばれる期間が設けられます。この期間中は、たとえ就職活動をしていても基本手当は支給されません。そして、この待期期間が満了する前に就職してしまうと、再就職手当の対象外になります。
待期期間は、離職後に本当に失業状態にあるかどうかを確認するための期間です。具体的には、失業認定日にハローワークで最初の認定を受けた日から起算して7日間がカウントされます。この7日間は、土日祝日も含めた暦日で計算されるため、実際に就職活動を開始できるのは、申請から約1週間後ということになります。
例えば、10月1日にハローワークで失業保険の受給手続きをした場合、10月7日までが待期期間となります。10月8日以降に就職が決まれば、再就職手当の対象となりますが、10月7日以前に就職してしまうと対象外です。
この待期期間の考え方は意外と見落とされがちですが、特に即日採用や短期間での内定が出た場合は注意が必要です。「もう仕事が決まったから失業保険の手続きは不要」と考えて申請をキャンセルしてしまうと、再就職手当も受け取れなくなります。就職が決まりそうな段階でも、まずはハローワークで受給手続きを完了させ、7日間の待期期間を経過してから正式に就職するようにしましょう。
1年以上の雇用が見込まれること
再就職手当の対象となるのは、「安定した職業に就いた場合」に限られます。ここでいう「安定した職業」とは、1年以上の雇用が見込まれる仕事を指します。つまり、短期アルバイトや数ヶ月の契約社員、日雇い労働などは対象外となります。
この「1年以上の雇用が見込まれる」という条件は、雇用契約書に明記されている雇用期間で判断されます。正社員として無期雇用契約を結ぶ場合はもちろん対象となりますが、契約社員や派遣社員であっても、契約期間が1年以上であれば条件を満たします。また、契約期間が半年や3ヶ月であっても、契約書に「更新の可能性あり」と明記されており、実質的に1年以上の雇用が見込まれる場合は対象となることがあります。
ただし、この判断はハローワークが行うため、契約内容に不安がある場合は、就職前にハローワークの窓口で確認しておくことをおすすめします。特に派遣社員の場合、派遣会社との雇用契約と派遣先企業での就業期間が異なることがあるため、どちらの期間が適用されるのかを明確にしておく必要があります。
また、自営業や個人事業を開始する場合も、「1年以上事業を継続する見込み」があれば再就職手当の対象となります。この場合は、事業計画書や開業届の写しなどを提出し、事業の継続性を証明する必要があります。フリーランスとして独立する場合も、複数のクライアントと長期契約を結んでいるなど、安定した収入が見込まれることを示せれば対象となる可能性があります。
自己都合退職による「給付制限」がある場合の注意点
自己都合で退職した場合、失業保険には原則として2ヶ月間(2020年10月以降、5年間のうち2回までは2ヶ月、3回目以降は3ヶ月)の「給付制限期間」が設けられます。この期間中は基本手当が支給されませんが、再就職手当の取り扱いには特別なルールがあります。
給付制限期間中に就職する場合、最初の1ヶ月間については、ハローワークまたは職業紹介事業者(厚生労働大臣の許可を受けた民間の職業紹介会社)の紹介によって就職した場合のみ、再就職手当の対象となります。つまり、自分で求人サイトを見て応募したり、知人の紹介で就職したりした場合は、給付制限開始から1ヶ月以内だと再就職手当を受け取れません。
一方、給付制限が始まってから1ヶ月経過した後であれば、就職経路に関係なく再就職手当の対象となります。例えば、10月1日から給付制限が始まった場合、11月1日以降に就職すれば、どのような経路で見つけた仕事であっても再就職手当を受け取れます。
この条件は、自己都合退職者が安易に失業保険を受給することを防ぎつつ、早期再就職を促進するためのバランスを取ったルールといえます。自己都合で退職した場合は、この「1ヶ月」というタイミングを意識しながら就職活動を進めることが重要です。
ただし、会社都合で退職した場合や、正当な理由のある自己都合退職(配偶者の転勤、育児・介護、健康上の理由など)の場合は、給付制限がないため、このルールは適用されません。待期期間の7日間を経過すれば、すぐに再就職手当の対象となります。
その他の4つの条件も忘れずに確認
これまで説明した4つの条件に加えて、以下の4つの条件も満たす必要があります。
5. 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと 前の会社に出戻りする形で再就職した場合は、再就職手当の対象外です。これは、形式的に退職と再雇用を繰り返して不正に手当を受給することを防ぐためのルールです。ただし、グループ会社や関連会社への就職は、資本関係や経営陣の重複状況によって判断されるため、ケースバイケースです。
6. 離職理由による給付制限を受けた場合、待期期間満了後1ヶ月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によること これは前述した給付制限に関する条件の再確認です。
7. 雇用保険の被保険者資格を取得していること 新しい職場で雇用保険に加入する必要があります。週20時間以上の勤務で31日以上の雇用見込みがあれば、通常は雇用保険の加保険者となります。
8. 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと 再就職手当は、一度受給すると3年間は再受給できません。これは、短期間での転職を繰り返して手当を受給し続けることを防ぐためのルールです。
これら8つの条件をすべて満たして初めて、再就職手当の受給資格が得られます。一つでも欠けると支給されないため、就職活動中から意識しておくことが大切です。
いくらもらえる?再就職手当の計算方法とシミュレーション
再就職手当の支給額は、失業保険の残日数によって異なります。残日数が多いほど、受け取れる金額も多くなる仕組みです。具体的な計算方法とシミュレーションを見ていきましょう。
残り日数が3分の2以上なら「70%」支給
失業保険の所定給付日数の3分の2以上を残して就職した場合、再就職手当の支給率は70%となります。これは、非常に早い段階で再就職を決めた人へのインセンティブとして、高い支給率が設定されているものです。
計算式は以下の通りです。
再就職手当の支給額 = 基本手当日額 × 70% × 支給残日数
例えば、基本手当日額が6,000円、所定給付日数が90日の場合、60日以上残っている状態で就職すれば、70%の支給率が適用されます。仮に残日数が70日だった場合、計算は以下のようになります。
6,000円 × 70% × 70日 = 294,000円
つまり、約29万4,000円の再就職手当を一括で受け取れることになります。この金額は、失業保険を70日分受け取った場合(6,000円×70日=420,000円)と比較すると少なく見えますが、新しい職場からの給与も同時に得られるため、トータルの収入は大きく上回ります。
基本手当日額は、離職前6ヶ月間の賃金総額を180で割った「賃金日額」の50〜80%(年齢や賃金額によって変動)で計算されます。一般的には、月給が20万円程度であれば基本手当日額は5,000〜6,000円程度、月給30万円程度であれば7,000〜8,000円程度となります。
支給率70%が適用される「3分の2以上」という条件を満たすためには、できるだけ早い段階で就職を決めることがポイントです。例えば、所定給付日数90日の場合、60日以上残っている必要があるため、失業認定を1〜2回受けた段階で就職を決めるのが理想的です。
残り日数が3分の1以上なら「60%」支給
失業保険の所定給付日数の3分の1以上、3分の2未満を残して就職した場合、再就職手当の支給率は60%となります。70%に比べるとやや低くなりますが、それでも十分にまとまった金額を受け取れます。
計算式は以下の通りです。
再就職手当の支給額 = 基本手当日額 × 60% × 支給残日数
例えば、基本手当日額が6,000円、所定給付日数が90日の場合、30日以上60日未満残っている状態で就職すれば、60%の支給率が適用されます。仮に残日数が45日だった場合、計算は以下のようになります。
6,000円 × 60% × 45日 = 162,000円
約16万2,000円の再就職手当を受け取れることになります。この場合も、失業保険を45日分受け取った場合(6,000円×45日=270,000円)よりは少ないですが、45日分の給与収入(例えば月給25万円なら約37万5,000円)と合わせると、トータルでは大きく得をすることになります。
支給率60%が適用される「3分の1以上、3分の2未満」という条件は、比較的就職活動に時間がかかった場合でも該当しやすい範囲です。所定給付日数90日の場合、残日数が30日以上60日未満であれば対象となるため、失業認定を2〜3回受けた後でも十分に間に合います。
ただし、残日数が3分の1を切ってしまうと再就職手当の対象外になるため、「もう少し失業保険をもらってから就職しよう」と考えすぎると、結果的に手当を受け取れなくなる可能性があります。残日数を定期的に確認しながら、計画的に就職活動を進めることが大切です。
【具体例】所定給付日数90日の場合の受給額目安
ここで、最も一般的な所定給付日数90日のケースについて、具体的なシミュレーションをしてみましょう。基本手当日額を6,000円と仮定します。
ケース1:30日目に就職が決まった場合(残日数60日)
- 支給率:70%
- 再就職手当:6,000円 × 70% × 60日 = 252,000円
- 失業保険の受給額:6,000円 × 30日 = 180,000円
- 失業保険関連の合計:432,000円
ケース2:45日目に就職が決まった場合(残日数45日)
- 支給率:60%
- 再就職手当:6,000円 × 60% × 45日 = 162,000円
- 失業保険の受給額:6,000円 × 45日 = 270,000円
- 失業保険関連の合計:432,000円
ケース3:60日目に就職が決まった場合(残日数30日)
- 支給率:60%
- 再就職手当:6,000円 × 60% × 30日 = 108,000円
- 失業保険の受給額:6,000円 × 60日 = 360,000円
- 失業保険関連の合計:468,000円
ケース4:失業保険を最後まで受給した場合(90日間)
- 再就職手当:0円
- 失業保険の受給額:6,000円 × 90日 = 540,000円
- 失業保険関連の合計:540,000円
一見すると、失業保険を最後まで受給したほうが金額的に多く見えますが、ここに新しい職場からの給与を加えると、状況は大きく変わります。
ケース1の場合(30日目に就職)
- 失業保険関連:432,000円
- 2ヶ月分の給与(月給25万円と仮定):500,000円
- 合計:932,000円
ケース4の場合(90日間受給)
- 失業保険関連:540,000円
- 給与:0円
- 合計:540,000円
その差は約39万円にもなります。さらに、早期に就職することで、社会保険への加入、厚生年金の加入期間延長、ボーナスの支給対象になる可能性など、金額に換算しにくいメリットも得られます。
また、所定給付日数が120日や150日の場合は、さらに大きな金額の再就職手当を受け取れる可能性があります。例えば、所定給付日数150日で基本手当日額7,000円の場合、100日以上残っている状態で就職すれば、7,000円×70%×100日=490,000円、約49万円もの再就職手当を受け取れます。
このように、再就職手当の制度を活用することで、経済的に大きなメリットを得られることが分かります。「早く決まると損」ではなく、「早く決まったほうが得」というのが現実なのです。
再就職手当の申請から受給までの3ステップ
再就職手当を受け取るには、正しい手順で申請する必要があります。タイミングを間違えたり、必要書類を揃え忘れたりすると、受給できなくなる可能性もあるため、しっかり確認しておきましょう。
ステップ1:採用が決まったらハローワークへ連絡
再就職が決まったら、まずはハローワークに連絡して「就職が決まったこと」と「就職日(入社日)」を報告します。この連絡は、就職日の前日までに行う必要があります。連絡方法は、直接窓口に行くか、電話でも可能です。
この段階で、ハローワークの担当者から「再就職手当支給申請書」を受け取ります。この申請書は、就職後に事業主(新しい会社)からの証明をもらい、ハローワークに提出する重要な書類です。申請書は失業認定日に受け取ることもできますが、就職日が迫っている場合は、できるだけ早めにハローワークを訪れて受け取っておくことをおすすめします。
また、この時点で、自分が8つの受給要件を満たしているかどうかを、ハローワークの担当者に確認してもらうこともできます。特に、給付制限中の就職経路や、雇用契約の内容に不安がある場合は、この段階で相談しておくと安心です。
なお、就職が決まったからといって、すぐに「雇用保険受給資格者証」や「失業認定申告書」を返却する必要はありません。これらの書類は、再就職手当の申請時に必要となるため、就職後もしっかり保管しておきましょう。
ステップ2:就職後に事業主から証明書をもらう
就職日(入社日)を迎えたら、新しい会社の人事担当者に「再就職手当支給申請書」の事業主欄に記入・押印をしてもらいます。この欄には、会社名、所在地、事業内容、雇用保険の加入状況、雇用契約期間などを記載してもらう必要があります。
事業主の証明は、就職日から1ヶ月以内に申請する場合は必須ですが、1ヶ月を過ぎてから申請する場合は、代わりに「雇用保険被保険者証」のコピーを提出することでも対応できます。ただし、できるだけ早く申請したほうが、手当の振込も早くなるため、就職後すぐに人事担当者に依頼するのが理想的です。
多くの企業では、入社時のオリエンテーションや書類提出の際に、このような公的手続きについて説明があります。もし説明がない場合は、自分から「再就職手当の申請をしたいので、証明書への記入をお願いします」と伝えましょう。一般的な人事担当者であれば、再就職手当の制度を理解しているため、スムーズに対応してもらえるはずです。
注意点として、事業主が証明を拒否することはほとんどありませんが、万が一記入を渋られた場合は、「雇用保険法に基づく正式な手続きです」と伝え、それでも対応してもらえない場合はハローワークに相談しましょう。ハローワークから事業主に確認を取ってもらうこともできます。
ステップ3:再就職手当支給申請書を提出する
事業主からの証明が得られたら、以下の書類を揃えてハローワークに提出します。
必要書類:
- 再就職手当支給申請書(事業主の証明付き)
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書
- 印鑑(認印可)
- 振込先口座の通帳またはキャッシュカード
提出期限は、就職日の翌日から1ヶ月以内です。この期限を過ぎると、再就職手当を受け取れなくなる可能性があるため、必ず期限内に提出しましょう。提出先は、失業保険の受給手続きを行ったハローワークです。引越しなどで遠方に就職した場合でも、原則として受給手続きを行ったハローワークに提出する必要があります。郵送での提出も可能ですが、書類不備があると再提出が必要になるため、できれば窓口で直接提出することをおすすめします。
提出後、ハローワークで審査が行われます。審査では、8つの受給要件を満たしているか、雇用保険の加入状況、就職日の確認などが行われます。審査には通常1〜2週間程度かかり、問題がなければ指定した口座に再就職手当が振り込まれます。
振込のタイミングは、申請から約1ヶ月後が目安です。ただし、ハローワークの混雑状況や、事業主への確認に時間がかかる場合は、さらに時間がかかることもあります。振込が遅れている場合は、申請したハローワークに問い合わせて、審査状況を確認することもできます。
なお、再就職手当の申請と同時に、失業保険の受給資格は終了します。つまり、再就職後に再び失業した場合、この期間の失業保険を改めて受給することはできません。ただし、新しい職場で一定期間(原則6ヶ月以上)雇用保険に加入した後に再び失業した場合は、新たに失業保険の受給資格を得ることができます。
知っておきたい注意点とよくある疑問
再就職手当の制度には、意外と知られていない注意点や、よくある疑問があります。申請前に確認しておくことで、トラブルを避けられます。
ハローワークを通さない求人サイトでの就職は対象?
「リクナビ」や「マイナビ」「doda」などの求人サイト、あるいは「LinkedIn」のようなSNS経由で就職した場合でも、再就職手当の対象となるのでしょうか?答えは「基本的には対象」です。
再就職手当の受給要件には、「ハローワークの紹介でなければならない」という条件は含まれていません(ただし、給付制限中の最初の1ヶ月間を除く)。そのため、民間の求人サイト、人材紹介会社、友人・知人の紹介、企業の公式サイトからの直接応募など、どのような経路で就職しても、8つの条件を満たしていれば再就職手当を受け取れます。
ただし、前述のとおり、自己都合退職で給付制限を受けている場合、給付制限開始から最初の1ヶ月間については、ハローワークまたは厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者(民間の有料職業紹介会社)の紹介による就職のみが対象となります。この「職業紹介事業者」には、リクルートエージェント、doda、マイナビエージェントなどの大手人材紹介会社が含まれます。
一方、求人サイトに自分で応募する形式の「求人広告」は、職業紹介には該当しないため、給付制限中の最初の1ヶ月間は対象外となります。例えば、リクナビNEXTやマイナビ転職のような求人サイトで自分で応募した場合は、給付制限開始から1ヶ月経過後でないと再就職手当を受け取れません。
この区別は分かりにくいため、給付制限中に就職活動をする場合は、利用するサービスが「職業紹介」に該当するかどうかを、ハローワークに事前に確認しておくことをおすすめします。また、ハローワークの求人に応募すれば、このような心配は不要になるため、給付制限中はハローワークの求人を中心に活動するのも一つの方法です。
早期退職してしまったら手当はどうなる?
再就職手当を受け取った後、新しい職場が合わずに早期退職してしまった場合、手当を返還しなければならないのでしょうか?これは多くの人が不安に感じるポイントですが、原則として返還の必要はありません。
再就職手当の受給要件には「1年以上の雇用が見込まれること」とありますが、これはあくまで「就職時点での見込み」を指します。実際に就職した後、やむを得ない事情で短期間で退職することになったとしても、それが就職時点では予測できなかった場合は、手当を返還する必要はありません。
ただし、故意に短期間での退職を繰り返して再就職手当を不正受給しようとした場合は、不正受給と見なされ、手当の返還を求められるだけでなく、刑事告発される可能性もあります。実際には、再就職手当を受け取った後、すぐに退職して再び失業保険を受給しようとする行為は、雇用保険法違反となるため、絶対に行ってはいけません。
また、再就職手当を受け取った後に退職した場合、前回の失業保険の受給資格は既に終了しているため、すぐに失業保険を受給することはできません。新しい職場で6ヶ月以上雇用保険に加入していれば、退職後に新たに失業保険の受給資格を得られますが、6ヶ月未満で退職した場合は、その期間が受給資格要件としてカウントされないため、注意が必要です。
早期退職を避けるためには、就職活動の段階で企業の情報をしっかり収集し、面接で職場環境や業務内容を詳しく確認することが重要です。また、試用期間中に「この会社は合わない」と感じた場合は、早めに上司や人事に相談し、配置転換や業務調整などの対応を求めることも検討しましょう。
さらに半年働くと「就業促進定着手当」がもらえる可能性も
再就職手当を受け取った人には、さらにもう一つの手当を受け取れるチャンスがあります。それが「就業促進定着手当」です。
就業促進定着手当は、再就職手当を受給した人が、新しい職場で6ヶ月以上継続して雇用され、かつ新しい職場での賃金が前職よりも低い場合に支給される手当です。賃金の低下分を補填する目的で設けられた制度で、再就職手当の受給者の約15〜20%が実際に受給しています。
受給要件は以下の通りです。
- 再就職手当を受給していること
- 再就職先で6ヶ月以上継続して雇用されていること
- 再就職先での6ヶ月間の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回ること
支給額の計算式は以下のようになります。
(離職前の賃金日額 – 再就職先の賃金日額)× 再就職先での勤務日数 × 40%
ただし、支給額には上限があり、再就職手当の支給残額(基本手当日額×支給残日数の40%)を超えることはできません。
例えば、離職前の賃金日額が10,000円、再就職先の賃金日額が8,000円、再就職先での6ヶ月間の勤務日数が120日の場合、計算は以下のようになります。
(10,000円 – 8,000円)× 120日 × 40% = 96,000円
つまり、約9万6,000円の就業促進定着手当を受け取れる可能性があります。
申請方法は、再就職先で6ヶ月間継続雇用された後、ハローワークに以下の書類を提出します。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証のコピー
- 再就職手当支給決定通知書のコピー
- 再就職先での6ヶ月間の賃金を証明する書類(給与明細など)
申請期限は、再就職日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月以内です。この期限を過ぎると受給できなくなるため、6ヶ月経過したらすぐに申請準備を始めましょう。
就業促進定着手当は、転職で一時的に給与が下がってしまった人にとって、非常にありがたい制度です。「前職よりも給与が下がったけど、やりがいのある仕事に就けた」「将来性を考えてキャリアチェンジをした」といった場合に、経済的な負担を和らげてくれます。再就職手当を受け取った人は、ぜひこの制度も視野に入れて、6ヶ月間しっかりと働き続けましょう。
また、就業促進定着手当の申請時には、新しい職場での給与明細が必要になるため、入社後の給与明細は必ず保管しておくことをおすすめします。特に、給与体系が複雑な場合や、残業代や手当が変動する場合は、6ヶ月分の平均賃金を正確に計算するために、すべての給与明細が必要になります。
まとめ
失業保険の再就職手当は、早期に再就職した人を経済的に支援するための制度です。「早く就職すると損をする」という誤解を持っている人も多いですが、実際には給与と再就職手当の二重取りができるため、失業保険を最後まで受け取るよりも、トータルの収入は大きくなります。
再就職手当を受け取るには、8つの条件をすべて満たす必要があります。特に重要なのは「失業保険の残日数が3分の1以上あること」と「1年以上の雇用が見込まれること」です。残日数が多いほど受け取れる金額も多くなり、3分の2以上残っていれば70%、3分の1以上残っていれば60%の支給率が適用されます。
申請手続きは、就職が決まったらハローワークに連絡し、就職後に事業主からの証明を受けて、1ヶ月以内に申請書を提出するという流れです。民間の求人サイトや紹介会社を通じた就職でも対象となるため(給付制限中の一部期間を除く)、幅広い就職活動が可能です。
さらに、再就職後6ヶ月間継続雇用され、賃金が前職より下がった場合は、就業促進定着手当も受け取れる可能性があります。これらの制度を上手に活用することで、安心して早期再就職に踏み出せるでしょう。
失業保険の残日数を定期的に確認しながら、焦らず、でも先延ばしにしすぎず、自分に合った仕事を見つけて、新しいキャリアをスタートさせましょう。再就職手当は、そんなあなたの第一歩を力強く後押ししてくれる制度なのです。
