MENU

失業保険は65歳以上でももらえる?64歳退職との損得分岐点と年金併用の裏ワザ

「65歳を過ぎたら失業保険はもらえない」——そう思い込んでいる方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。65歳を境に、受け取れる手当の名前と仕組みが変わるだけで、給付金そのものは引き続き受け取れます。

それどころか、退職するタイミングを1日ズレるだけで、受給できる金額や期間が数十万円単位で変わることもあります。また、2026年4月からは年金との調整ルールが大幅に緩和され、「働きながら年金を満額もらえる人」が一気に増えます。

この記事では、64歳退職と65歳退職の損得を具体的にシミュレーションし、70歳・75歳でも給付金をもらえる条件や、2026年の法改正で何が変わるかを、わかりやすく解説します。退職を控えたシニアの方が、後悔しない選択をするための情報を1万字以上にわたって凝縮しました。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

目次

65歳の壁で激変!「基本手当」と「高年齢求職者給付金」の違い

65歳という年齢は、雇用保険の給付において大きな分岐点です。同じ「仕事をやめた」状況でも、65歳になる前に退職するか、なってから退職するかによって、受け取れる手当の種類と中身が根本から変わります。まずはその違いを整理しましょう。

65歳になる前(誕生日の前々日まで)に辞める「基本手当」

一般的に「失業保険」と呼ばれているのが、この基本手当です。65歳の誕生日の前々日(法律上、誕生日の前日に65歳に達したとみなされるため、前々日が実質的な締め切りとなります)までに退職すると、通常の失業給付として基本手当が受け取れます。

基本手当の最大の特徴は、給付日数の多さです。勤続年数や退職理由に応じて、定年退職(会社都合に準じた扱い)の場合は最大150日分が保障されます。雇用保険に10年以上加入していれば120日、20年以上なら150日と、段階的に給付日数が伸びます。

ただし、大きな制約があります。基本手当の受給期間中は、老齢厚生年金が全額支給停止になります。ハローワークで求職申し込みをした翌月から、受給期間が終わるまでの間、老齢厚生年金(特別支給のものを含む)は一切受け取れません。年金の月額が高い方にとっては、これが大きなデメリットになります。

65歳になってから(誕生日の前日以降)辞める「高年齢求職者給付金」

65歳以降に退職した場合は、「高年齢求職者給付金」という制度が適用されます。名前は異なりますが、ハローワークで求職申し込みを行い、就労意欲があると認定されれば給付金を受け取れる点では、基本手当と同じ仕組みです。

高年齢求職者給付金の給付日数は、雇用保険への加入期間によって決まります。加入期間が1年未満であれば30日分、1年以上であれば50日分の一時金として一括で受け取れます。基本手当のように分割支給ではなく、認定後にまとめて振り込まれます。

この制度の最大のメリットは、年金との同時受給が可能な点です。高年齢求職者給付金を受け取っても、老齢厚生年金は一切減額されません。年金を受給しながら給付金もしっかり受け取れるため、年金額が高い方には特に有利な仕組みです。

また、年齢の上限も受給回数の制限もありません。65歳を過ぎた後も、条件を満たすたびに何度でも申請できる点も、大きな強みです。

【比較表】受給日数・支給方法・年金への影響をひと目で確認

基本手当と高年齢求職者給付金の主な違いを、下表にまとめます。

【基本手当(65歳の誕生日前々日までに退職した場合)】
・受給資格:64歳以下の一般被保険者
・給付日数:90日〜150日(勤続年数・退職理由による)
・支給方法:4週間ごとに分割支給
・年金への影響:受給期間中は老齢厚生年金が全額停止
・受給回数:原則1回のみ(受給期間内)

【高年齢求職者給付金(65歳の誕生日前日以降に退職した場合)】
・受給資格:65歳以上の高年齢被保険者
・給付日数:30日分または50日分(加入期間1年未満か1年以上か)
・支給方法:一括支給
・年金への影響:全額支給のまま、影響なし
・受給回数:条件を満たせば何度でも申請可

一見すると、給付日数の多い基本手当の方が有利に思えます。しかし、年金が止まる点を考慮すると、年金額の高い方にとっては65歳以降の退職の方が有利になるケースも少なくありません。次のセクションで具体的に検証します。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

どっちが得?「64歳11ヶ月」vs「65歳」退職シミュレーション

退職のタイミングを「65歳の誕生日の前々日まで」にするか「誕生日の前日以降」にするか、どちらが経済的に得かは、年金額や雇用保険の加入年数によって大きく変わります。ここでは、実際の数字を使って比べてみましょう。

64歳退職のメリット:受給日数が圧倒的に多い(最大150日〜)

64歳(誕生日前々日まで)で退職した場合、雇用保険の一般被保険者として基本手当が受け取れます。定年退職は「特定受給資格者」に準ずる扱いとなるケースが多く、この場合の給付日数は勤続年数に応じて次のように設定されています。

・加入期間1年以上5年未満:90日
・加入期間5年以上10年未満:90日
・加入期間10年以上20年未満:120日
・加入期間20年以上:150日

仮に直前6か月の平均月給が30万円(賃金日額約1万円)とすると、給付率は約60〜65%程度になります。基本手当日額を約6,000円と仮定すると、150日分で最大約90万円の受給が見込めます。

この金額は、高年齢求職者給付金の最大50日分(約30万円)と比べ、3倍近い差があります。純粋な給付総額だけを見れば、64歳退職が大きく有利です。

64歳退職のデメリット:受給中は「老齢厚生年金」が全額止まる

問題は年金の停止です。基本手当を受給している間(ハローワークで求職申し込みした翌月〜受給終了まで)、老齢厚生年金は全額支給停止になります。

たとえば月14万円の老齢厚生年金を受け取っている方が、150日(約5か月)の受給期間中に年金を止められると、5か月×14万円=70万円の年金を受け取れません。

このケースでは、基本手当の受給額(約90万円)から受け取れなかった年金(約70万円)を差し引くと、実質的な「プラス分」はわずか20万円程度になります。一方、65歳以降に退職して高年齢求職者給付金50日分(約30万円)を受け取れば、年金の停止も一切なく、30万円がそのまま手元に残ります。

つまり、年金月額が高いほど「64歳退職の優位性」は急速に失われます。

65歳退職のメリット:年金と100%併用可能+一括でもらえる

65歳以降の退職では、高年齢求職者給付金と年金を同時に受け取れます。年金の停止が一切ないため、給付金はそのまま上乗せの収入になります。

また、一括支給という点も実用的なメリットです。認定日から約7日後に、50日分(あるいは30日分)の給付金がまとめて口座に振り込まれます。分割支給の場合は認定日ごとにハローワークへ足を運ぶ必要がありますが、一括受給ならその手間が最小限で済みます。

さらに、高年齢求職者給付金は何度でも受け取れます。再就職して再び退職した場合も、条件を満たせば再申請が可能です。短期の再就職を複数回繰り返す方には、長期的に見てかなりの金額になることもあります。

【結論】年金額が高い人は「65歳以降」に辞めるのが正解?

損益分岐点の目安を確認しておきましょう。

64歳退職による基本手当の優位性(日数分の上乗せ)が、年金停止によるデメリットを上回るかどうかが判断の基準です。

【65歳退職が有利になりやすいケース】
・老齢厚生年金の月額が高い(目安:月15万円以上)
・雇用保険の加入期間が短く、給付日数が少ない
・できるだけ手続きを簡略化したい

【64歳退職が有利になりやすいケース】
・老齢厚生年金の月額が比較的低い(目安:月10万円未満)
・雇用保険に長く加入しており、150日分など給付日数が多い
・しっかりと求職活動をしながら受給したい

なお、国民年金(老齢基礎年金)は、基本手当受給中も停止されません。停止対象はあくまで老齢厚生年金(報酬比例部分)です。老齢厚生年金の受給額が少ない方(厚生年金の加入期間が短い方など)は、64歳退職でも年金の停止ダメージが小さく、基本手当の優位性が保たれます。

いずれにせよ、退職前に「自分の年金額」「雇用保険の加入期間」「退職理由」の3点を確認し、どちらが有利かを試算してから退職日を決めることを強くおすすめします。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

【2026年4月改正】在職老齢年金「65万円の壁」で働き方が変わる

2026年4月から、働くシニア世代にとって重要な制度改正が施行されます。年金をもらいながら働く場合に適用される「在職老齢年金制度」の支給停止基準額が、大幅に引き上げられます。定年後も働き続けるかどうか悩んでいた方には、非常に大きな追い風です。

支給停止基準額が51万円から「65万円」へ大幅引き上げ

在職老齢年金制度とは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている方を対象に、賃金と年金の合計額が一定基準を超えた場合に、超えた分の半額の年金を支給停止にする仕組みです。老齢基礎年金(国民年金部分)は停止の対象外で、対象は老齢厚生年金のみです。

2025年度の基準額は月51万円でした。これが2026年4月(令和8年4月)からは月65万円に引き上げられます。これは厚生労働省および日本年金機構が公式に発表した内容で、令和7年年金制度改正法に基づく措置です。

具体的には、毎月の賃金(標準報酬月額)と賞与を月換算した額を合計した「総報酬月額相当額」に、老齢厚生年金の月額(基本月額)を加えた数字が65万円を超えない限り、年金は全額支給されます。

月収50万円でも年金がカットされない?新基準の計算式

改正後の計算方法を整理します。

【計算の基本式(2026年4月以降)】
・基本月額 + 総報酬月額相当額 ≦ 65万円 → 年金は全額支給
・65万円を超えた場合 → 超過分の半額が支給停止

具体的な事例で確認してみましょう。

【事例1:月収46万円+老齢厚生年金月10万円の場合】
合計:56万円 → 65万円以下のため、年金10万円が全額支給されます。
2025年度までは51万円が基準だったため、超過分5万円の半額(2万5千円)が停止されていましたが、改正後は停止なしになります。年間換算で30万円の増額です。

【事例2:月収55万円+老齢厚生年金月15万円の場合】
合計:70万円 → 65万円を5万円超過。年金停止額は5万円÷2=2万5千円。
2025年度まで(51万円基準)の停止額は(70万-51万)÷2=9万5千円でしたので、停止額が大幅に減ります。

この改正により、年収600〜700万円台程度の働くシニアの多くが、年金の減額を受けることなく収入を得られるようになります。

高齢者の「働き控え」はもう不要!2026年からの損をしない働き方

これまで、賃金と年金の合計が基準額を超えることを嫌い、あえて勤務時間を減らしていた方(いわゆる「働き控え」)が一定数いました。年金が減らないよう、意識的に収入を抑えていたのです。

2026年4月以降は、この「働き控え」を検討する必要性が大幅に低下します。基準額が65万円になることで、月収50万円以上の収入を得ながらでも、年金月額が15万円以下であれば年金が一切減額されません。

ただし、注意点もあります。年金収入が増えると、翌年以降の所得税や住民税、社会保険料が増える可能性があります。また、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の保険料や介護保険料も、前年の所得をもとに算定されます。手取り額の最大化を考えるなら、税・社会保険料まで含めたトータルでの試算をおすすめします。

なお、70歳以上で厚生年金の被保険者ではない方も、厚生年金適用事業所で一定規模以上の働き方をしている場合は在職調整の対象になります。70歳以降も対象になる点は覚えておきましょう。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

70歳・75歳でも失業保険(給付金)はもらえるのか?

「70歳を過ぎたら、さすがに失業給付はもらえないだろう」という思い込みも、実は誤解です。高年齢求職者給付金に年齢の上限はありません。条件を満たせば何歳でも申請できます。

雇用保険に上限年齢なし!働く意思があれば何歳でも受給可能

2017年1月の法改正により、65歳以上の労働者も雇用保険の「高年齢被保険者」として加入できるようになりました。それ以前は65歳以降の新規加入ができなかったため、65歳を過ぎると雇用保険の恩恵を受けられませんでした。しかし現在は、70歳でも75歳でも雇用保険に加入でき、条件を満たせば離職時に高年齢求職者給付金を受け取れます。

「働く意思があること」が大前提です。具体的には、「就職したいという積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、就職できない状態」にあることが、失業の認定要件になります。体調が悪くてすぐに働けない状態や、すでに就職先が決まっている場合は対象外です。

受給条件は「離職前1年間に通算6ヶ月以上の加入」

高年齢求職者給付金を受け取るための主な条件は2つです。

第1の条件は、雇用保険への加入期間です。離職した日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6か月以上あることが必要です。「通算」という点が重要で、同じ1年間の中に複数の雇用が含まれていても、合計して6か月に達していれば問題ありません。

被保険者期間のカウント方法は、離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を「1か月」と数えます。日数が11日に満たない月でも、賃金の支払いの基礎となった労働時間が80時間以上あれば1か月とカウントできます。

第2の条件は、失業の状態にあることです。先述の「就職意思があるにもかかわらず就職できない状態」が認定されることが必要です。

自己都合退職でも大丈夫?高齢者の給付制限と待機期間

退職の理由によって、給付金が支給されるまでの期間が変わります。

まず、退職理由に関わらず全員に「7日間の待機期間」があります。ハローワークで求職申し込みを行った日から7日間は、失業状態の確認期間として給付金が支給されません。

自己都合退職の場合は、待機期間終了後にさらに給付制限期間があります。2025年4月1日以降に自己都合で離職した方については、5年間のうち2回までは給付制限期間が1か月になりました(以前は2か月)。ただし、5年間で3回以上の自己都合退職や、重責解雇の場合は3か月に延長されます。

一方、定年退職は「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に該当するケースが多く、給付制限なしで受給できます。ハローワークで離職票を提出する際に、離職理由の確認を受けることになります。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

知らないと損をする「高年齢求職者給付金」のリピート受給

高年齢求職者給付金の大きな特徴のひとつが、条件を満たすたびに繰り返し申請できる点です。この仕組みをうまく活用すれば、再就職のたびに給付金を受け取ることができます。

65歳以降は何度でももらえる?再就職のたびに申請する裏ワザ

基本手当(65歳未満の失業保険)は、受給期間中に残日数が残っていても再就職すると権利が消える仕組みです。これに対し、高年齢求職者給付金は、受け取った後に再就職し、また離職した場合でも、新たに受給要件(離職前1年間に6か月以上の加入)を満たせば、再度申請できます。

たとえば、65歳で退職して高年齢求職者給付金(50日分)を受け取り、その後パートやアルバイトで6か月以上勤務した後に再び退職すれば、また50日分の給付金を申請できます。年齢制限も受給回数の上限もありません。

ただし、毎回「離職前1年間に6か月以上の加入」が必要です。あまりに短期間の就労では、加入期間の要件を満たせない場合があります。

短期雇用を繰り返す場合の注意点と「循環的離職者」への対策

短期の雇用を繰り返す場合、いくつか注意すべき点があります。

まず、離職後は速やかにハローワークで申請手続きを行うことが重要です。高年齢求職者給付金の受給期間は、離職日の翌日から1年間です。この期限内に認定を受けなければ、失効してしまいます。また、手続きが遅れると受給できる日数が減る可能性があります。

次に、自己都合退職を繰り返す場合、給付制限の適用回数に注意が必要です。5年間に3回以上の自己都合退職を繰り返すと、3か月の給付制限が適用されます。短期でも雇用保険の被保険者であれば記録に残るため、離職理由の管理には注意が必要です。

同一企業での再雇用時は「不正受給」とみなされるリスク

定年退職後に同じ会社で再雇用されている場合、基本的には「就業中」として失業の状態に該当しないため、高年齢求職者給付金は受け取れません。

ただし、再雇用後に再び退職した場合は話が変わります。再雇用期間中に高年齢被保険者として雇用保険に加入していれば、その後の退職時に高年齢求職者給付金の対象になります。

なお、失業認定日の時点でも同じ会社で週20時間未満の勤務を続けている場合は、週20時間以上の別の仕事を探しているという条件を満たせば、給付金を受け取れる可能性があります。しかし、これは非常に複雑なケースのため、ハローワークに事前相談することをおすすめします。形式的な求職活動にとどまらず、本当に就職する意思があることを示すことが大切です。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

2025年4月からの「高年齢雇用継続給付」縮小への対応策

高年齢求職者給付金とは別に、60歳から64歳の方を対象にした「高年齢雇用継続給付」という制度があります。この制度が2025年4月から縮小されており、退職・再就職を考えるシニアにも影響があります。

支給率が最大15%から10%へ。いつ60歳になったかで差が出る

高年齢雇用継続給付とは、60歳以降の賃金が60歳時点と比べて75%未満に低下した場合に、その差を補う形で支給される給付金です。60歳から65歳になるまでの間、雇用を継続しやすくするための制度として1995年に創設されました。

2025年3月31日まで、賃金の低下率が61%以下の場合は60歳以降の賃金の最大15%が支給されていましたが、2025年4月1日以降に60歳を迎える方からは最大10%に引き下げられました。低下率の判定基準も変わり、64%以下であれば最大10%という新しいルールが適用されます。

重要なのは、適用されるルールが「いつ60歳になったか」によって決まる点です。2025年3月31日以前にすでに60歳を迎えていた方は、2025年4月以降も従来の最大15%が適用されます。65歳までの受給期間中は旧ルールのままです。

一方、2025年4月2日以降に60歳を迎える方(1965年4月2日以降生まれ)は、最初から10%が上限のルールが適用されます。月の給付額にして最大5%分の差が出るため、月収25万円で受給していた場合、最大で月1万2,500円の減額になります。

賃金低下を補うための「再就職手当」との併用テクニック

高年齢雇用継続給付が縮小される一方、退職後の再就職を後押しする「再就職手当」は引き続き活用できます。再就職手当は、基本手当(65歳未満の失業保険)の受給資格がある方が、給付日数の残りが3分の1以上ある状態で安定した職に就いた場合に支給される一時金です。

残日数が3分の2以上残っている場合は基本手当日額×残日数×70%、3分の1以上の場合は60%が支給されます。給付制限期間が明けた後に早期に再就職するほど、多くの再就職手当を受け取れる設計になっています。

64歳で退職し、基本手当を受け取りながら積極的に再就職活動を行い、早期に内定を得た場合は、再就職手当と再就職後の高年齢雇用継続給付の組み合わせが有効な戦略になります。

会社からの給与と給付金、年金の「トータル手取り」を最大化する方法

60歳以降のお金の受け取りは、複数の制度が絡み合います。給与・高年齢雇用継続給付・老齢厚生年金・在職老齢年金による調整——これらを一本のタイムラインで整理し、トータルの手取りを最大化するのが理想です。

特に注意が必要なのは、高年齢雇用継続給付を受け取っている場合、特別支給の老齢厚生年金(60〜64歳の一部の方が受け取れる年金)も一定額カットされる点です。給与の増額が年金の減額につながるケースもあるため、給与体系の変更を検討する際は社会保険労務士への相談も有効です。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

65歳以上の失業保険申請に必要なものと手続きの流れ

高年齢求職者給付金の手続きは、ハローワーク(公共職業安定所)で行います。難しい手続きではありませんが、書類の準備と提出のタイミングに注意が必要です。

離職票の確認ポイント:離職理由が「定年」か「自己都合」か

手続きで最初に必要なのが「離職票」です。退職した会社から2枚セット(離職票-1・離職票-2)で交付されます。会社が発行してくれない場合は、ハローワークに直接相談することもできます。

離職票の中でも特に確認すべきは、「離職理由」の欄です。定年退職の場合は「定年」として記載されます。定年退職は特定受給資格者に準じる扱いを受けることが多く、給付制限なしで手当を受け取れます。

もし離職票の理由欄が「自己都合」になっていて、実際には定年退職や会社都合に近い状況だった場合は、ハローワークで異議申し立てができます。離職理由が正しく記載されているかを必ず確認しましょう。

手続きに必要な主な書類は以下のとおりです。

・離職票-1・2(退職した会社から交付)
・マイナンバーカード(持参しない場合は個人番号確認書類+身元確認書類の2種類)
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
・写真1枚(縦3cm×横2.4cm)

ハローワークでの「求職の申し込み」で伝えるべき「働く意思」

離職票を持参してハローワークを訪れたら、まず「求職の申し込み」を行います。この手続きでは、「就職したい意思があること」「いつでも就職できる状態にあること」を申告します。

「65歳だから求職活動といっても……」と思う方もいるかもしれませんが、フルタイムでなくても構いません。週20時間未満のパートタイムや、短期の仕事を希望することも立派な求職活動です。働く意思さえあれば、年齢に関わらず申請できます。

申し込みから7日間の待機期間が経過すると、指定された認定日にハローワークへ足を運んで失業認定を受け、その後7日前後で給付金が振り込まれます。

年金事務所への連絡は必要?手続きの優先順位

高年齢求職者給付金を受け取る場合、年金との調整(支給停止)は発生しません。そのため、年金事務所への連絡は原則不要です。これは基本手当(65歳未満の失業保険)との大きな違いです。

基本手当を受け取る場合は、ハローワークでの手続き後に年金機構側で自動的に年金停止の処理が行われます。年金事務所への申告は不要ですが、「年金が止まる」という事実を把握したうえで手続きを進めることが大切です。

手続きの優先順位としては、まず離職票の受け取り→ハローワークで求職申し込み・受給資格決定→待機期間経過→認定日→給付金受け取り、という流れを意識しましょう。受給期間(離職後1年間)は延長できないため、退職後はできるだけ早く手続きを始めることが重要です。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

特例:病気や介護で辞める場合の「特定理由離職者」認定

病気や介護など、やむを得ない事情で退職した場合は、通常より有利な条件で給付金を受け取れる「特定理由離職者」として認定される可能性があります。

65歳以上でも「給付制限なし」で受給できるケース

特定理由離職者とは、本人の意志に反した、やむを得ない理由による離職者のことです。主な認定事由は以下のとおりです。

・体力の不足、心身の障害による退職
・疾病、負傷による退職
・家族の介護・看護のための退職
・妊娠・出産・育児による退職
・配偶者の転勤・転職等による退職
・通勤が困難になった場合(交通手段の廃止など)

これらの事由が認められると、自己都合退職であっても給付制限(1か月または3か月の待機)が免除されます。待機期間(7日間)が終わり次第、速やかに給付金が支給されます。

65歳以上の方も特定理由離職者として認定される可能性があります。高齢になるほど体調や家族の介護などによる退職も増えるため、該当するかどうかハローワークに確認することをおすすめします。

医師の診断書や介護の事実を証明する書類の準備

特定理由離職者として認定を受けるには、離職理由を証明する書類を用意する必要があります。

病気・怪我による退職であれば、医師の診断書や療養の事実がわかる書類が求められます。介護が理由の場合は、介護が必要な家族の状況(要介護認定通知書、主治医意見書など)を示す書類が必要です。

これらの書類は、ハローワークへの申請時に提出するか、または事前に準備したうえで提出します。離職票の「離職理由」欄にも、これらの事情が正しく記載されているか確認しましょう。自己都合退職として記載されていても、実態が特定理由に該当する場合は、申告によって訂正・認定してもらえます。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

よくある質問(FAQ)

高年齢求職者給付金に関して、実際によく寄せられる疑問を取り上げます。

70歳を過ぎて厚生年金保険料を払っていないけどもらえる?

高年齢求職者給付金は、雇用保険(失業保険)の制度です。厚生年金保険とは別の制度のため、厚生年金保険料を払っているかどうかは関係ありません。

70歳以上の方は厚生年金の被保険者から外れますが(厚生年金の保険料の支払い義務がなくなる)、雇用保険(高年齢被保険者)への加入は引き続き可能です。雇用保険に加入して6か月以上働いた後に退職し、就労意思があれば、70歳以上でも高年齢求職者給付金を申請できます。

年金を一括で繰り下げ受給している場合はどうなる?

老齢厚生年金の受給を繰り下げている(まだ受給を開始していない)場合は、そもそも「受給中の年金を停止する」という問題は発生しません。基本手当の受給中でも、受給を開始していない年金は影響を受けません。

ただし、繰り下げ中に基本手当の受給申請をした場合、受給できたはずの年金を「みなし支給」として扱う制度があります。後から繰り下げ加算額を計算する際に、受給申請をした月以降の増額分が反映されなくなるケースがあります。繰り下げ中に退職を検討している方は、日本年金機構や社会保険労務士に事前確認することをお勧めします。

退職代行を使って辞めても給付金は受け取れる?

退職代行サービスを利用して退職した場合でも、高年齢求職者給付金の受給には影響しません。給付金の受給資格は、退職の方法ではなく離職理由(定年か自己都合かなど)と雇用保険の加入期間によって決まります。

ただし、退職代行を使った場合は「自己都合退職」として処理されるケースがほとんどです。定年退職や会社都合でないと、給付制限(1か月)が発生します。また、離職票の発行を会社が拒む場合は、ハローワークに相談することで対応してもらえます。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

まとめ:自分に最適な「退職日」と「受給プラン」を見極めよう

65歳前後の退職と失業給付の仕組みは、一見複雑に見えますが、整理してみると判断の軸はシンプルです。

この記事の重要ポイントを振り返ります。

・65歳の誕生日の前々日までに退職→基本手当(最大150日分)、受給中は老齢厚生年金が全額停止
・65歳の誕生日の前日以降に退職→高年齢求職者給付金(30日または50日分の一時金)、年金は全額もらいながら受給できる
・年金月額が高い方(目安:月15万円以上)は65歳以降退職が有利なケースが多い
・2026年4月から在職老齢年金の支給停止基準が51万円→65万円に引き上げ。働きながら年金全額受給できる人が大幅に増える
・高年齢求職者給付金は何歳でも、何度でも(条件を満たすたびに)受給可能
・高年齢雇用継続給付は2025年4月から最大支給率が15%→10%に縮小(2030年廃止予定)
・特定理由離職者に認定されると、自己都合でも給付制限なしで受給できる

「年金が止まるから65歳前に辞めた方がいい」「どうせ大した額ではないから申請しなくていい」——こうした思い込みで、何十万円もの損をするシニアの方は少なくありません。

自分の年金額・雇用保険の加入期間・退職理由の3点を確認し、退職日を1日単位で意識するだけで、受け取れる金額が大きく変わることがあります。退職を検討している方は、まずハローワークか社会保険労務士への相談をおすすめします。正確な試算をもとに、自分にとって最善の退職プランを立てましょう。

おすすめの社会保険給付金のお問い合わせはこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次